「ビーシュマ」という名の由来
デーヴァヴラタ(Devavrata)が後に「ビーシュマ(Bhishma)」と呼ばれるようになったのは、彼が生涯独身を貫くという過酷な誓いを立てたためです。サンスクリット語で「ビーシュマ」は「恐るべき誓いを立てた者」を意味する言葉であり、その壮絶な誓願にちなんで贈られた名前なのです。
父シャンタヌ王の恋と難題
若き日のデーヴァヴラタは、ハスティナープラを治めるシャンタヌ王と先妻との間に生まれた王子でした。あるとき、シャンタヌ王はサティヤヴァティーという美しい女性に恋をします。ところが、サティヤヴァティーの父である漁師の長は、娘との結婚を認める条件として「サティヤヴァティーとの間に生まれた子どもに王位を継がせること」を求めました。これは、先妻の子であるデーヴァヴラタを差し置いて、サティヤヴァティーの子が後継者となるという、非常に厳しい要求でした。
父の幸せのために捧げた二つの誓い
デーヴァヴラタは父を深く敬愛しており、何としても父を悲しませたくありませんでした。そこで彼は、まず王位継承権を自ら放棄します。しかしそれだけでは争いの種が残ります。将来、自分の子孫が王位を主張すれば、王国は再び対立に陥るからです。そこでデーヴァヴラタは、誰にも代えられない究極の決断として、生涯結婚しないことを誓いました。こうして彼は、家族と王国を守る守護者として生きる道を自ら選び取ったのです。
神々の祝福と「ビーシュマ」の誕生
この無私の犠牲に天もまた動きました。空から花が降りそそぎ、神々は彼の誓いを称えたといわれています。そして感動した父シャンタヌ王は、彼に「死の時を自ら選ぶことができる」という特別な祝福(イッチャー・ムリティウ)を授けました。この瞬間から、彼は「ビーシュマ」——恐るべき誓いを立てた者——として知られるようになったのです。
まとめ:誓いを貫いた偉大な長老
こうしてデーヴァヴラタは「ビーシュマ」となり、生涯を通じてダルマ(正法)を守り抜き、クル王国で最も尊敬される長老として君臨しました。彼の物語は、親への孝行と自己犠牲、そして一度立てた誓いを最後まで貫く強さを象徴するものとして、叙事詩マハーバーラタの中でも特に有名なエピソードの一つとされています。