かつての中国といえば、大家族で暮らし、兄弟姉妹が大勢いるのが当たり前というイメージがありました。実際、20世紀半ばの中国は世界有数の「子沢山の国」であり、人口は急増の一途をたどっていました。ところが、現代の中国はもはや「多産の国」「子宝大国」とはみなされていません。
その分水嶺となったのが、1970年代に始まった国家主導の家族計画、すなわち「一人っ子政策」です。
一人っ子政策とはどのような政策か
中国政府は1970年頃から、人口爆発を抑えることを目的とした計画生育(家族計画)プログラムを公式に実施してきました。当初は結婚や出産の時期を遅らせるよう呼びかける比較的穏当なものでしたが、1980年前後になると一歩踏み込み、都市部の夫婦を中心に「一組の夫婦が持てる子どもは一人だけ」とする厳格な一人っ子政策へと移行しました。
なぜ出産を制限したのか
当時の中国指導部は、急激な人口増加が食料供給、住宅、教育、医療といった限られた資源を圧迫し、経済発展の足かせになると強く懸念していました。「少なく産み、大切に育てる」ことで一人ひとりの生活水準を高め、国全体の近代化を加速させる――それが政策の根幹にあったのです。
政策がもたらしたもの
一人っ子政策は30年以上にわたり徹底して実施され、中国の出生率は劇的に低下しました。その結果として現れたのが、次のような構造的な変化です。
急速な高齢化
子どもの数が減る一方で平均寿命は伸び続け、中国は世界でも類を見ないスピードで高齢化社会へと突入しました。若世代が高齢者を支える負担は増大し、年金制度の持続性や労働力不足が深刻な社会課題となっています。
男女比の歪み
男児を望む伝統的な風潮と出生制限が重なり、新生児の男女比に大きな偏りが生じました。その影響は今日まで続き、婚姻市場や人口動態全体に波紋を広げています。
政策の終焉と、それでも戻らない出生率
中国政府は2015年末に一人っ子政策を廃止し、翌2016年からは「二人っ子政策」へ、さらに2021年には「三人っ子政策」へと舵を切りました。しかし、教育費や住宅費の高騰、働き方や価値観の多様化を背景に、若い世代の出産意欲は容易には回復していません。近年の中国では出生数が過去最少を更新し、総人口もついに減少局面へと転じました。
まとめ:「多産の国」ではなくなった中国
このように、現代中国は半世紀近くにわたり国家主導で出産を抑制してきた歴史を持ちます。一人っ子政策による徹底的な人口コントロールこそが、現代中国が「子沢山の国=多産的な国」とみなされなくなった最大の理由なのです。