アフリカ系アメリカ人の地理的分布を大きく変えた「大移動」
米国におけるアフリカ系アメリカ人の地理的分布において、最も劇的な変化となったのは、南部から西部および北東部への人々の移動です。この歴史的な人口移動は「大移動(Great Migration)」とも呼ばれ、20世紀初頭に始まり、今日まで続いてきました。
1964年公民権法以前の南部での暮らし
1964年の公民権法をはじめとする画期的な法律が制定される以前、米国のアフリカ系アメリカ人の大多数は南部に居住していました。しかし当時の南部では、差別や人種隔離(ジム・クロウ法など)が日常的に存在し、多くの人が経済的にも社会的にも厳しい制約の中で生きていました。
そのため、より良い就労機会と、より包括的で公正な環境を求めて、アフリカ系アメリカ人は次第に西部や北東部へと移住していったのです。
アフリカ系アメリカ人人口が多い州(2019年時点)
2019年の時点で、アフリカ系アメリカ人の人口が最も多い州は以下の通りです。
- カリフォルニア州
- テキサス州
- ニューヨーク州
- ジョージア州
- フロリダ州
これらの州は規模が大きく多様性に富んだ経済を持ち、アフリカ系アメリカ人に幅広い機会を提供しています。また、歴史的に見ても、多くの南部諸州と比べて受け入れられやすい風土があったことも要因の一つです。
大移動がもたらした政治・文化・経済への影響
南部からの人口流出は、米国の政治、文化、経済に多大な影響を及ぼしました。都市部に定着したアフリカ系アメリカ人は政治的に活発になり、その発言力を高めていきました。さらに、音楽や芸術、食文化などの分野でも大きな足跡を残し、西部や北東部の文化と経済の形成に大きく貢献しています。
近年の動向:南部への回帰
興味深いことに、20世紀後半以降は、雇用機会の増加や生活コストの面から、再び南部へ戻る「新しい大移動」と呼ばれる動きも見られています。このように、アフリカ系アメリカ人の地理的分布は、社会情勢や経済環境の変化とともに今なお進化し続けているのです。