その前提、実は誤解かもしれません
「憲法には連邦政府の権限の長いリストがあるのに、州の権限は記載されていない」という見方には、重要な誤解が含まれています。州の権限が無視されているわけではなく、むしろ憲法修正第10条によって明確に守られているのです。
修正第10条が定める「留保された権限」
合衆国憲法修正第10条(1791年批准、権利章典の一部)は、次のように規定しています。
「憲法によって合衆国に委任されず、また各州に対して禁止されていない権限は、それぞれの州または人民に留保される」。
この条文により、連邦政府に明示的に与えられていない権限は、すべて州政府か国民のものとなります。教育、警察・治安、地方自治、婚姻制度など、日常生活に密接に関わる統治の多くがここに含まれます。
なぜ連邦政府の権限だけを列挙するのか
建国の父たちは、連邦政府の権限を「列挙された権限(enumerated powers)」として憲法本文に具体的に書き込みました。外交、通貨の発行、国防、州際通商の規制などがその例です。
この設計思想の背景には、強力な中央政府への警戒心があります。連邦政府が行使できる権限を憲法で厳密に限定することで、権限の恣意的な拡大を防ごうとしたのです。
州の権限にリストが不要な理由
州の権限については、個別に列挙する代わりに、修正第10条による「包括的な留保」という方式が採られました。連邦政府の権限は「書かれたものだけ」に制限される一方、州の権限は「書かれていないものも含めて」広く認められるという、対照的な構造になっています。
つまり結論として、憲法が連邦政府の権限のみを詳しく列挙するのは「列挙主義」と呼ばれる原則に基づくものであり、州の権限は修正第10条によってすでに包括的に保障されているため、わざわざ一覧化する必要がないのです。