19世紀の大陸横断鉄道の建設では、労働者たちの食事は決して豊かとは言えず、その内容は工事現場の場所、食料の供給状況、そして労働者自身の出身背景や好みといった複数の要因によって大きく左右されました。それでも、過酷な肉体労働を支えるために、当時の食卓には独自の工夫が凝らされていました。ここでは、建設現場で実際に食べられていた代表的な食品を10個ご紹介します。
大陸横断鉄道建設の労働者を支えた10の食品
1. パンとハードタック(乾パン)
パンと、小麦粉・水・塩だけで作られた硬いビスケット「ハードタック」は、労働者たちの主食でした。ハードタックはコンパクトで日持ちがし、輸送や保管の過酷な条件にも耐えられるため、特に重宝されていました。
2. 塩漬け豚肉と豆
保存肉の一種であるソルトポーク(塩漬け豚肉)と豆は、定番のタンパク質と炭水化物の組み合わせでした。豚肉は茹でるか炒められ、豆と一緒に煮込まれることで、体が温まり腹持ちの良い一品となりました。
3. ドライフルーツ
リンゴ、モモ、レーズンなどの乾燥果物は、長期にわたる建設期間における貴重なビタミンや栄養素の供給源でした。お粥やシチューに加えて風味を引き立てる使い方も一般的でした。
4. 牛肉
新鮮な牛肉や干し牛肉も食卓に上っていました。特に牧畜が盛んな地域ではよく消費されました。ビーフジャーキーのように乾燥・燻製した牛肉は、長旅の間も肉を保存できる便利な手段でした。
5. 野菜
ジャガイモ、タマネギ、ニンジンなどの新鮮な野菜は、入手可能なときには積極的に食事へ取り入れられました。ビタミン、ミネラル、食物繊維の重要な補給源となっていました。
6. 小麦粉
小麦粉はパン、ホットケーキ、その他の焼き菓子を作れる万能な食材でした。単調になりがちな労働者の食事に、わずかながらも料理のバリエーションをもたらしました。
7. コーヒー
コーヒーは労働者たちの間で最も広く飲まれていた飲み物です。カフェインによる覚醒効果が、疲れ切った体に活力を与える「働く水」として珍重されました。
8. 糖蜜(モラセス)
砂糖精製の過程で生まれる糖蜜は、手に入りやすい甘味料として使われ、さまざまな料理に甘みと風味を添えていました。
9. ウイスキーなどの酒類
アルコール、特にウイスキーは労働者たちに広く親しまれていました。一日の重労働の後にリラックスする手段であると同時に、時には物々交換の「通貨」として使われることもあったといいます。
10. 缶詰
桃、トマト、サーモンなどの缶詰も食事の一部でした。当時としては画期的な保存食品であり、持ち運びやすさに加えて、限られた食材の中でもメニューの幅を広げる役割を果たしました。
労働者の出身によって異なる食文化
興味深いことに、労働者の出身背景によって食事の質には明確な差がありました。主に中国から渡った労働者たちは、米、茶、干し魚、乾燥野菜などを自前で調達し、栄養バランスの取れた食事を心がけていたことで知られています。一方、アイルランド系やその他の移民労働者は、ハードタックや塩漬け肉中心の食事に頼ることが多く、健康面での差が現れたとも伝えられています。
まとめ
大陸横断鉄道の建設を支えたのは、ハードタックや塩漬け豚肉といった保存性の高いシンプルな食材でした。限られた供給の中で工夫を凝らした彼らの食事は、アメリカ史における偉大なインフラ建設の陰にある、もう一つのドラマと言えるでしょう。なお、食料の入手状況や種類は、場所や時代、労働者集団の構成によって大きく異なる点にも留意が必要です。