英語には「to send someone to Coventry(誰かをコベントリーに送る)」という興味深い慣用句があります。これは「相手を無視する」「集団から締め出す」「仲間外れにする」といった意味で使われる表現です。では、なぜこのような意味を持つようになったのでしょうか。その答えは、17世紀のイングランド内戦に隠されています。
イングランド内戦とコベントリーの立場
1642年から始まったイングランド内戦は、国王を支持する王党派(騎士党)と、議会の権限を主張する議会派(丸頭党)が激しく対立した内乱でした。ミッドランド地方の都市コベントリーは、当時議会派の強固な拠点として知られており、王政に反対する者たちの重要な砦となっていました。
こうした情勢の中で、王党派は厄介者や捕虜となった敵対者を、わざわざ議会派の支配下にあるコベントリーへ送り込む習慣をつくりました。彼らにとって、それは文字どおり「敵地への追放」を意味していたのです。
門前払いと冷遇が生んだ慣用句
ところが皮肉なことに、コベントリーに送られた人々を温かく迎えたのは地元住民ではありませんでした。市の門は開かれず、到着した捕虜たちは入城を拒否され、やむなく城壁の外で野宿することを余儀なくされます。
さらに地元の人々は、彼らに食料も水も与えることを頑なに拒みました。捕虜たちは風雨にさらされたまま、周囲からの完全な無視に耐えるほかなかったのです。この過酷な仕打ちこそが、「コベントリーに送られる=周囲から無視され、孤立させられる」という慣用句の起源だとされています。
現代での使い方
今日でもこの表現は、職場や学校などで特定の人物を意図的に無視し、孤立させる状況を描写する際によく用いられます。たとえば「He was sent to Coventry by his colleagues(彼は同僚たちに無視されている)」のように使われます。
400年近く前の内戦時代の出来事が、今もなお日常的な英語表現として生き続けているのは、言葉の歴史の面白さを感じさせるエピソードですね。