私たちが今日利用している石炭は、地球の歴史の中でごく限られた時代に形成されたものです。その起源は、約3億5000万年前にあたる「石炭紀(せきたんき)」と呼ばれる地質時代にさかのぼります。
石炭紀とはどんな時代だったのか
石炭紀は、古生代の後期に位置する地質時代で、その名の通り世界中で石炭の原となる堆積物が大量に形成された時期です。当時の地球は、現在よりも気候が温暖で、大気中には二酸化炭素や酸素が現在より豊富に含まれていたと考えられています。
この恵まれた環境のもと、陸上では植物が爆発的に繁栄しました。高さ数十メートルに及ぶ巨大なシダ植物であるリビアや、ヒカゲノカズラ類に近いリコポディア、そしてイグサに似たカラミテスなどの植物が、湿地帯を埋め尽くすほどの大森林を形成していました。
なぜ泥炭が大量に蓄積したのか
石炭紀の森林が特異だったのは、これらの巨大植物にはまだ天敵となる分解者がほとんど存在しなかった点です。倒れた木々や枯れ草は十分に腐敗・分解されることなく、湿地の底に次々と積み重なっていきました。
こうして水没した植物の遺体が酸素の少ない環境でゆっくりと堆積し、泥炭(ピート)と呼ばれる層となりました。この広大な泥炭湿地こそが、後の石炭鉱床の直接の源となったのです。
泥炭から石炭へ――数億年の時を経た変化
泥炭がそのまま石炭になったわけではありません。地殻変動によって泥炭層が地下深くに埋もれると、高温・高圧の環境にさらされます。この過程で水分や揮発成分が失われ、炭素分が濃縮されていきます。これを石炭化と呼びます。
石炭化の度合いに応じて、石炭は以下のように段階的に変化していきます。
- 亜炭(褐炭):石炭化が浅く、木の形が残ることもある低品位の石炭
- 瀝青炭:火力発電などで広く使われる一般的な石炭
- 無煙炭:最も石炭化が進んだ最高品位の石炭
つまり、今私たちが燃やしている石炭の一粒一粒は、3億年以上もの歳月をかけて太古の森が変化したものだと言えます。
まとめ
石炭の形成は約3億5000万年前の石炭紀に始まりました。温暖な気候と二酸化炭素・酸素に富む大気、そして分解者の不在という偶然の重なりが、巨大な植物の繁栄と泥炭湿地の形成をもたらしました。石炭は単なる燃料ではなく、地球史上の壮大な生命活動の記録でもあるのです。