建国当初、政党は存在しなかった
アメリカ合衆国が建国された当時、今日私たちが知っているような「政党」は存在していませんでした。独立宣言や憲法制定に関わった建国の父たち(Founding Fathers)にとって、政党という概念はむしろ警戒すべき対象でした。
建国の父たちが政党を危惧した理由
建国の父たちの多くは、政党の形成が国家を対立と分裂へ導くと考えていました。彼らの目には、党派心(ファクショナリズム)は国民の団結を損ない、特定の利益集団のために公共の利益が犠牲になる危険な仕組みとして映っていたのです。
実際、初代大統領ジョージ・ワシントン自身も、退任の際に行った有名な「告别の演説(フェアウェル・アドレス)」の中で、党派争いが共和国を弱体化させると強く警告しています。
合意と協力による統治という理想
彼らが理想としたのは、政党に頼らない統治のあり方でした。すなわち、異なる意見を持つ者たちが対話を重ね、合意(コンセンサス)と協力を通じて国を運営していくことです。憲法制定の過程で見られた妥協の精神は、まさにこの理念を体現するものでした。
それでも政党は誕生した
しかし現実には、連邦政府の権限や憲法の解釈をめぐる意見の相違から、建国後まもなく政治的な派閥が生まれます。アレクサンダー・ハミルトンを中心とする連邦党(フェデラリスト党)と、トマス・ジェファーソンやジェームズ・マディソン率いる民主共和党がその代表例です。
こうして、建国の父たちが懸念したにもかかわらず、政党はアメリカ政治に不可欠な存在として定着していきました。建国の父たちの理想と、その後に形成された政党政治との対比は、今日のアメリカ政治を理解するうえで重要な視点といえるでしょう。