まず結論から言うと、アメリカはハワイを軍事的に「占領」したわけではありません。正確には、1898年8月12日に行われたのは「併合(annexation)」です。これは、同年7月7日にアメリカ側と、当時主権国家であったハワイ共和国の代表者の間で取り交わされた文書が、アメリカ議会の承認を経て発効したことによるものです。
なぜ「占領」ではなく「併合」なのか
「占領」という言葉は、通常、戦争などによって他国の領土を武力で支配することを指します。しかしハワイの場合、手続き上は両政府間の合意という形をとっていました。もっとも、この過程が決して対等だったわけではない点は、歴史的に大きな論争のテーマとなっています。
併合までの歴史的経緯
1. 王政の転覆(1893年)
19世紀後半のハワイ王国では、サトウキビ農園などを経営するアメリカ系住民の影響力が強まっていました。1893年1月、リリウオカラニ女王の統治に反対する勢力がクーデターを起こし、王政は倒されます。この際、停泊していたアメリカ海軍の艦船から上陸した兵士が一定の役割を果たしたこともあり、「アメリカによる介入だったのではないか」という批判が当時から存在しました。
2. ハワイ共和国の成立(1894年)
王政崩壊後、暫定政府を経て1894年にハワイ共和国が樹立されました。初代大統領にはサンフォード・ドールが就任しています。つまり、1898年の併合時点でハワイは「独立国」として存在していたのです。
3. 併合条項の承認と正式移管(1898年)
当初、クリーブランド大統領は併合に消極的でしたが、マッキンリー政権下の1898年、米西戦争のさなかに太平洋上の戦略的拠点としてハワイの価値が再評価され、議会は併合を定めた決議(ニューランズ決議)を可決し、7月7日に署名されました。そして8月12日、ホノルルのイオラニ宮殿で正式な移管式典が行われ、ハワイ国旗が降ろされました。
その後のハワイ
併合後の1900年には組織法が制定され、ハワイはアメリカの準州(Territory)となりました。その後、第二次世界大戦や太平洋地域におけるアメリカの戦略的重要性の高まりを背景に、1959年8月21日についに50番目の州として連邦に加盟し、現在に至っています。
まとめ
「ハワイが州になる前にアメリカに占領された」という認識は不正確です。実際には、かつて主権を持っていたハワイ共和国との間で1898年に併合の手続きが進められ、準州を経て1959年に州へ昇格しました。ただし、その過程において王政転覆への関与や先住ハワイアンの意思が十分に反映されなかった問題は、今日でも歴史的事実として受け止められ続けています。