南アメリカの歴史

コロンブスはお金を何に使った?大航海時代の通貨と物々交換の実態

クリストファー・コロンブスの探検航海において、現代のような「お金」を使う場面はほとんどありませんでした。その最大の理由は、彼が到達したアメリカ大陸では、当時まだ貨幣という概念が一般的に普及していなかったからです。

アメリカ大陸では貨幣が存在しなかった

15世紀末のコロンブスが到達したカリブ海地域の先住民社会では、ヨーロッパのような鋳造貨幣による経済活動は行われていませんでした。人々の間で取引の中心となっていたのは、物々交換(バーター)です。コロンブスやその乗組員たちは、先住民と交流する際も、金銭ではなくモノとモノを交換する形で必要な物資を手に入れていました。

何を「通貨」として使ったのか

コロンブス一行は、スペインから船に積み込んださまざまな物品を、いわば「交換用の財」として活用しました。具体的には以下のようなものです。

  • 食料品:長期の航海に備えて積み込んだ保存食など
  • 道具類:先住民にとって珍しい金属製の工具
  • 武器:剣や鉄製品などの希少な工芸品
  • 装飾品:ガラス玉や鈴(ホークベル)、赤い帽子など、先住民が好んだ小物

これらの品々は、先住民にとって見たことのない珍しいものであったため、高い価値を持って受け入れられました。記録によれば、わずかなガラス玉や鈴と引き換えに、先住民が大切にしていた金細工を受け取ることもあったといいます。

ヨーロッパ内では当然ながらお金を使用

一方、航海の出発点であるヨーロッパやスペイン国内では、貨幣経済がすでに確立していました。コロンブスの航海自体、カスティーリャ女王イサベル1世らの王室からの出資によって賄われており、船の建造、乗組員の人件費、食料や装備の調達には多額の資金が必要でした。つまり、「お金」はあくまで航海の準備段階や帰還後のヨーロッパでこそ重要だったのです。

金こそが最大の目的

興味深いことに、コロンブス自身は金(ゴールド)を強く求めていました。当時のヨーロッパでは金が富と権力の象徴であり、彼はアジアへの航路開拓とともに、金の産地を見つけることを大きな目的の一つとしていたのです。皮肉なことに、貨幣を使わない土地へ渡りながら、その土地で最も価値あるものとして金を追い求めたことになります。

まとめ

コロンブスは航海中のアメリカ大陸において、現代的な意味での「お金」を実質的に使用していませんでした。代わりに、食料・道具・武器・装飾品といった携帯品を交換材料として物々交換を行い、必要な物資や協力を先住民から得ていました。この事実は、当時の二つの世界――貨幣経済が発達したヨーロッパと、交換経済が主流だったアメリカ大陸――の文化の違いを如実に示すエピソードだといえるでしょう。