南アメリカの歴史

1798年の「スペイン無敵艦隊」によるホンジュラス湾の英国入植地攻撃は実在したのか?史実と記録を解説

「1798年にスペイン無敵艦隊がホンジュラス湾のイギリス入植地を攻撃した」という出来事について、結論から述べると、そのような名称の攻撃に関する確立された歴史的記録は存在しません。ただし、この疑問の背景には、よく知られた史実との混同があると考えられます。

「スペイン無敵艦隊」という言葉が指すもの

「スペイン無敵艦隊(Spanish Armada)」は、通常、1588年にイングランド侵攻のため派遣されたスペイン王フェリペ2世の大艦隊を指します。この艦隊はイングランド海軍の迎撃と暴風雨により壊滅的な打撃を受けました。したがって、「1798年のスペイン無敵艦隊」という表現自体が、時代の取り違えまたは別の事件との混同によるものとみられます。

混同されやすい史実:セントジョージズ・ケーの戦い(1798年9月)

一方で、1798年には実際にホンジュラス湾(現在のベリーズ沖)でイギリス人入植者とスペイン軍が衝突した海戦が存在します。それが「セントジョージズ・ケーの戦い(Battle of St. George's Caye)」です。

  • 日付:1798年9月10日
  • 場所:現在のベリーズ沖、セントジョージズ・ケー周辺海域
  • 対峙勢力:マホガニー伐採で利益を得ていたイギリス人入植者(ベイメン)と、ユカタン方面から派遣されたスペイン艦隊
  • 結果:数的に劣勢だったイギリス側が、短期間の交戦でスペイン艦隊の撃退に成功

この戦いは現在のベリーズにおいて重要な歴史的出来事とされ、毎年9月10日に国民的祝日として記念されています。ただしこれは「無敵艦隊」による大規模遠征ではなく、地域紛争としての限定的な海戦でした。

情報を確認するための資料・調査先

当該時期の歴史をさらに詳しく調べたい場合は、以下のような資料が役立ちます。

  • イギリス国立公文書館(The National Archives, Kew):植民地省(CO)文書や海軍省(ADM)文書に、18世紀末のホンジュラス湾岸(英領ホンジュラス=現在のベリーズ)に関する記録が所蔵されています。
  • スペインのアーカイブ:セビリアのインディアス総合文書館(Archivo General de Indias)には、ユカタン総督府とベリーズ方面の作戦に関する文書が保管されています。
  • ベリーズの国立資料館・研究書:セントジョージズ・ケーの戦いに関する現地の公式記念資料や歴史研究。
  • 学術データベース(JSTORなど):「Battle of St. George's Caye」「British Honduras」「Bay of Honduras 1798」などのキーワードで検索すると、信頼性の高い二次資料にたどり着けます。

まとめ

「1798年のスペイン無敵艦隊によるホンジュラス湾のイギリス入植地攻撃」として知られる出来事は記録上存在せず、おそらく1588年のアルマダ戦役と1798年のセントジョージズ・ケーの戦いが混同されたものです。正確な情報を得るには、一次史料(各国の公文書館資料)と学術文献の両方を照らし合わせて確認することをおすすめします。