最大の課題は「共同体間の暴力」と「分断」
英国から独立を達成する際、インドが直面した最大の問題は、宗教共同体間の暴力(コミューナル・バイオレンス)と、それに伴う国土の分断(パーティション)でした。
インドが宗教・民族・社会経済的背景において極めて多様な国であることは、広く知られています。ヒンドゥー教徒とムスリム(イスラム教徒)をはじめ、シク教徒、キリスト教徒、仏教徒など多くの宗教集団が共存しており、さらに言語やカースト制度に基づく社会的階層も複雑に絡み合っています。
興味深いのは、英国による植民地支配の時代には、こうした多様性は確かに存在していたものの、国家の根幹を揺るがすような露骨な宗教対立として表面化しなかったという点です。しかし、独立運動が本格化するにつれ、「ヒンドゥー教徒のインド」と「ムスリムのパキスタン」という二国家構想が台頭し、宗教的な違いが政治問題へと先鋭化していきました。
その結果、1947年の独立・分断の際には史上まれに見る大規模な人口移動が発生しました。数百万人が故郷を追われ、宗教暴動によって数十万人から百万人以上が犠牲になったと推計されています。この分断が残した傷跡は、今日に至るまでインドとパキスタンの関係に深い影を落とし続けています。