まず前提として整理しておきたいのは、議会が採択したのは「テラー修正条項(Teller Amendment)」そのものではなく、「テラー決議(Teller Resolution)」という点です。この決議は、アメリカ合衆国がキューバを併合することを防ぐことを目的として設計されました。
テラー決議とは何か
1898年、米西戦争の開戦にあたり、アメリカ議会はキューバの独立を承認する共同決議の中に、コロラド州選出のヘンリー・M・テラー上院議員が提案した条項を組み込みました。これがいわゆるテラー修正条項であり、対スペイン開戦を定める議会立法の一部として正式に採用されたのです。
決議の核心となる文言
当時の条文は、次のように宣言しています。
「アメリカ合衆国は、同島の平定のためを除き、同島に対する主権、管轄権または支配権を行使する意向や意図を一切有しないことをここに表明し、それが達成された暁には、同島の統治と支配をその島民自身の手に委ねる決意であることを主張する」
決議が果たした役割
テラー決議(およびテラー修正条項)は、スペインを撃破した後には必ずキューバを独立させるという、実質的な約束として機能しました。当時のアメリカ国内では領土拡張=帝国主義への警戒感も強く、この決議はそうした懸念を和らげ、米西戦争の早期収束にも寄与したとされています。
こうした経緯を経て、1902年にはキューバが独立共和国として宣言されることになりました。ただし、その前年の1901年に成立したプラット修正条項によって、アメリカはキューバの内政への介入権や軍事基地の設置権(グァンタナモ米軍基地の起源)を確保しており、独立後の両国関係は単純なものではありませんでした。
それでもなお、「キューバを併合しない」というテラー決議の原則は、アメリカの対キューバ政策の出発点として、歴史に明確な一歩を刻んだ出来事といえるでしょう。