ヨーロッパの歴史

マルコ・ポーロはイタリアにパスタを伝えたのか?有名な通説の真実を解説

「マルコ・ポーロが中国からイタリアにパスタを持ち帰った」という話は、世界中で広く知られています。しかし、実はこの通説には歴史的な根拠がほとんどありません。

マルコ・ポーロ伝説の起源

13世紀後半、ヴェネツィアの商人マルコ・ポーロは中国(当時の元朝)へ旅し、その見聞を『東方見聞録』に記しました。この中で彼は、小麦粉で作られた麺状の食品について言及しており、これが後年「パスタ伝来」の物語として脚色されたと考えられています。

しかし、彼が言及したのは中国の麺料理であり、それがイタリアのパスタと直接結びついた証拠は存在しないのです。

パスタはマルコ・ポーロ以前からイタリアにあった

歴史資料によれば、パスタはマルコ・ポーロの時代よりはるかに前からイタリアに存在していました。

  • 1154年:アラブの地理学者イドリースィーが、シチリア島で乾燥麺が大量に生産されていたことを記録しています。これはマルコ・ポーロの東方旅行(1271年〜)より約120年も前のことです。
  • 古代ローマ時代:「ラガナ(lagana)」と呼ばれる薄い小麦の生地が食べられており、現在のラザニアやパスタの原型とされています。
  • エトルリア人の時代:さらに遡ると、紀元前のイタリア半島でも穀物を加工した麺状の食品が存在した可能性が指摘されています。

なぜ「マルコ・ポーロ伝説」が生まれたのか?

この魅力的な物語が広まった背景には、いくつかの要因があります。

  1. ロマンチックな物語への需要:東西文明をつなぐ冒険譚として、人々の想像力をかき立てるストーリーだったこと。
  2. 麺文化の類似性:中国の麺料理とイタリアのパスタの形が似ていたため、「伝わった」という説明が受け入れられやすかったこと。
  3. 20世紀のメディア拡散:雑誌記事や広告などを通じて、この説が繰り返し紹介されたこと。

まとめ:パスタはイタリア独自の進化を遂げた食文化

結論として、マルコ・ポーロがパスタをイタリアにもたらしたという確かな歴史的証拠はなく、パスタは彼の旅行以前からすでにイタリアに根付いていました。アジアの麺文化との交流や影響がまったくなかったとは断言できませんが、イタリアのパスタは主に地中海世界の食文化の中で独自に発展してきたものなのです。