中世ヨーロッパの住宅は、地域の環境、材料の入手しやすさ、そして所有者の経済力によって、使われる建築材料が大きく異なっていました。ここでは、中世の家づくりに典型的に用いられた主な材料を詳しく解説します。
1. 木材(ティンバー)
中世において最も豊富に入手できた建材が木材です。耐久性と構造強度に優れていることから、オーク(ナラ)やアッシュ(トネリコ)が主に使用されました。柱や梁といった家の骨組みには欠かせない、最も重要な材料でした。
2. 石材
石は教会、城、その他の重要な建造物に主に使われました。木材に比べて入手が難しく、加工にも高度な技術と多大な労力が必要だったため、一般の住宅にはほとんど普及しませんでした。石造りの家を持てるのは、ごく一部の富裕層だけでした。
3. 茅(かや)
屋根材として広く使われていたのが茅葺きです。小麦、大麦、ライ麦などの穀物の藁を束ねて屋根に敷き詰めました。農村部では手軽に入手できる身近な材料であり、中世の家並みの風景を特徴づけていました。
4. 粘土と泥
粘土と泥は、木組みの骨組みの隙間を埋めるために使われたほか、粘土製の床を作る際にも活用されました。さらに、「コブ(cob)」と呼ばれる壁や間仕切りを形成する材料としても重宝されました。
5. 小舞壁(ワトル・アンド・ドーブ)
「ワトル(wattle)」と呼ばれる編んだ木材に、粘土や泥、動物の糞などを混ぜ合わせた「ドーブ(daub)」を塗り込む伝統的な工法です。軽量でありながら丈夫な壁を作れることから、中世から近世にかけての木組み建築で広く採用されました。
6. 土
締め固めた土やコブも、壁材として利用されました。土は安価でどこでも入手しやすく、断熱性にも優れていたため、庶民の住まいに適した材料でした。
7. 白亜(チョーク)
イングランドの一部の地域では、白亜(チョーク)のブロックを壁材として使用しました。白亜は比較的柔らかく加工しやすい石灰岩の一種で、産出地域では貴重な建材となりました。
まとめ
中世の家にどの材料が使われるかは、その土地の地理的条件、材料の入手しやすさ、そして所有者の財力によって決まりました。裕福な人々は石造りの頑丈な家を建てることができましたが、大多数の人々は木材、土、茅を組み合わせた家で暮らしていたのです。