古い家屋の煙突や煙道の近くに見られる「S」という刻印は、「Stove(ストーブ)」を意味するマークです。
このマークは、その家に開放式の暖炉(fireplace)ではなく、薪や石炭を燃料とする鋳鉄製の調理用ストーブがかつて設置されていたことを示しています。
なぜ「S」マークが付けられたのか
19世紀から20世紀初頭にかけて、欧米の住宅では調理と暖房を兼ねた鋳鉄製ストーブが広く普及しました。一つの煙突に複数の煙道が接続されることも多く、どの開口部がどの設備につながっているのかを区別するために、こうした識別マークが刻まれたり表示されたりしていました。
暖炉との違い
開放型の暖炉は部屋の中で直接薪を燃やすのに対し、鋳鉄(キャストアイアン)製ストーブは密閉された燃焼室を持ちます。そのため熱効率が高く、加熱したコンロ面で調理もできる点が大きな特徴です。「S」マークがあれば、その煙突部分はストーブ用の排煙路だった可能性が高いといえます。
古い家のリノベーションや建物の歴史を調べる際には、こうした小さなマークが、当時の生活様式や暖房・調理設備の変遷を知る貴重な手がかりとなります。