古代の歴史

古代エジプトの防腐処理(ミイラ作り)にはどれくらいの時間がかかったのか?

古代エジプトの防腐処理にかかった期間

古代エジプトにおけるミイラ作り(防腐処理)は、高度な技術と深い宗教的信念が組み合わさった、非常に精巧で手間のかかる儀式でした。遺体を永遠に保存するためのこの工程全体が完了するまでには、およそ40日間を要したとされています。

なぜ40日もかかったのか?

古代エジプト人にとって、死後の世界へ旅立つために魂が肉体を再認識できるよう、遺体を完全な状態で保存することが極めて重要でした。そのため、以下のような複雑な工程が段階的に行われました。

防腐処理の主な工程

歴史家ヘロドトスの記録などによると、防腐処理はおおむね次のような流れで進められました。

1. 内臓の摘出
まず、腐敗の原因となる胃、腸、肺、肝臓などの内臓を取り除きました。これらは「カノポス壺」と呼ばれる専用の容器に保存されました。ただし、心臓は魂の座と考えられていたため、体内に残されました。

2. 脳の除去
鼻孔から特殊な道具を挿入し、脳を取り除く作業も行われました。当時の人々は脳の役割を十分に理解しておらず、保存対象とはみなしていませんでした。

3. ナトロンによる脱水・乾燥
最も重要な工程が、天然塩の一種である「ナトロン」を使った乾燥です。遺体をナトロンに埋め、体内の水分を完全に取り除くまで約35〜40日間待ちました。この期間が、防腐処理全体に40日ほどかかる最大の理由です。

4. 包帯巻きと納棺
乾燥が完了した遺体には香料や樹脂が詰められ、オイルが塗られた後、何十メートルにも及ぶ亜麻布で丁寧に包まれました。

葬儀全体では70日間

興味深いことに、古代エジプトの喪の期間は合計70日間とされており、そのうち約40日が防腐処理、残りの約30日が包帯巻きや納棺、葬列などの儀式に充てられていました。これは天狼星(シリウス)が空に見えなくなる期間とも関連していると言われています。

このように、古代エジプトの防腐処理は単なる技術ではなく、来世への信仰を体現した壮大な儀式だったのです。