エジプトの古代都市メンフィス。実は「メンフィス」という名前は、都市が建設された当初から存在していたわけではありません。この呼び名はギリシャ・ローマ時代を経て定着したもので、都市本来の名前は古代エジプト語による別の名称でした。ここでは、メンフィスの名前がどのようにして生まれたのかをわかりやすく解説します。
メンフィスの名前の由来
1. ギリシャ人の影響
紀元前4世紀、アレクサンドロス大王がエジプトを征服すると、彼とその後継者たちはギリシャ文化をこの地に根付かせました。都市には古くから「ハ・カ・プタハ(Hut-ka-Ptah)」と呼ばれる区域があり、これは創造神プタハの魂(カー)を祀る神殿を意味する古代エジプト語でした。
2. 名前の変容
ギリシャ人入植者たちは、エジプト語の地名を自らの言葉に置き換えていきました。プタハはギリシャの鍛冶と金属加工の神ヘファイストスと同一視されたため、その聖域は「ヘファイステイオン」と呼ばれるようになりました。
3. 別の呼び名「メン・ネフェル」
一方、都市そのものは古くから「メン・ネフェル(Men-nefer)」と呼ばれていました。これは「永続する美しき住処」「堅固な基盤」などを意味する言葉です。ギリシャ人はこの「メン・ネフェル」を自国語で発音しやすい形に変え、「メンフィス(Memphis)」と呼ぶようになったと考えられています。
4. 「メンフィス」の定着
こうして生まれた「メンフィス」という呼び名は、ヘロドトスをはじめとする古代ギリシャの作家たちによって広く用いられ、やがてローマ時代を通じて公式な名称としてすっかり定着しました。
まとめ
つまり、この古代都市は本来「ハ・カ・プタハ」や「メン・ネフェル」といったエジプト語の名前を持っていましたが、現在私たちが知る「メンフィス」という名前は、ギリシャ・ローマ時代に「メン・ネフェル」がギリシャ語化したものなのです。都市の名前には、異文化が交錯した当時の時代背景が色濃く反映されているのです。