神話学で有名な「英雄の旅(モノミス)」という物語構造において、物語の始まりを告げるのが「冒険への呼びかけ」です。では、ギリシャ神話最大の英雄の一人であるオデュッセウスにとって、その呼びかけとなったのは何だったのでしょうか。
冒険への呼びかけは「トロイア戦争」
オデュッセウスにとっての冒険への呼びかけは、トロイア戦争でした。イタケーの王として穏やかな生活を送っていた彼は、スパルタのヘレネーをめぐる戦いに参戦することを余儀なくされます。当初は出征を嫌って狂人を装ったとも伝えられますが、最終的にはギリシャ連合軍の知将として戦いに加わり、有名な「トロイアの木馬」の計画を立てて戦争を終結へと導きました。
戦後、待ち受けていたのは過酷な帰還の旅
しかし、戦争の終結こそが本当の試練の始まりでした。故郷イタケーを目指して船出したオデュッセウスは、わずか数日の航海で済むはずの道のりを、実に10年もの歳月をかけて漂うことになります。その途上で彼を襲った障害は数え切れません。
帰還の旅を阻んだ主な試練
- 怪物たちとの遭遇:一つ目の巨人キュクロープス(ポリュペーモス)、セイレーンの歌声、6つ頭の怪物スキュラと大渦カリュブディスなど、命を脅かす魔物たちが次々と立ちはだかりました。
- 暴風雨の荒波:海原は度重なる嵐によって船団を打ち砕き、仲間たちは一人また一人と失われていきました。
- 神々の怒り:特に海神ポセイドンの憎悪は深刻で、息子ポリュペーモスへの復讐として、オデュッセウスの帰還は幾度も妨げられました。
呼びかけが意味するもの
トロイア戦争という呼びかけに応じたことで、オデュッセウスは平凡な王から、知恵と忍耐を極限まで磨かれた伝説的な英雄へと変貌を遂げました。ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』に描かれるこの壮大な帰還譚は、「冒険への呼びかけ」がどのように人生を根本から変えるのかを示す、古典的な例として今なお語り継がれています。