ロゼッタストーンには、同じ内容の勅令が3種類の異なる文字で刻まれています。この石碑が世界的に有名な理由は、まさにこの「三言語併記」という特徴にあります。
ロゼッタストーンに刻まれた3つの言語
1. 古代エジプトの聖刻文字(ヒエログリフ)
石碑の上部には、神官や王族が使用した格式の高い古代エジプトの象形文字(ヒエログリフ)が刻まれています。神殿の壁面などに見られる、絵画的な文字体系です。
2. デモティック(民衆文字)
中央部分には、デモティックと呼ばれるエジプトの日常的な筆記体文字が記されています。当時の一般庶民や行政文書で広く使われていた、より実用的な文字です。
3. 古代ギリシャ語
下部には古代ギリシャ語が刻まれています。プトレマイオス朝エジプトはギリシャ系の王朝であったため、公式文書にはギリシャ語が用いられていました。
なぜ3つの言語で書かれていたのか?
この石碑は紀元前196年、少年王プトレマイオス5世の即位を記念して発布された「メンフィス勅令」の写しです。神官たちが王への感謝と忠誠を示すために作成したもので、神官向けの聖刻文字、民衆向けのデモティック、支配者層向けのギリシャ語というように、読者層に応じて3つの文字が使い分けられました。
古代文字解読の決定的な鍵となった石碑
1799年にナポレオン軍によってエジプトで発見されたロゼッタストーンは、長らく謎に包まれていたヒエログリフの解読に決定的な役割を果たしました。内容が同一であるギリシャ語の文章を手がかりに、フランスの学者ジャン=フランソワ・シャンポリオンが1822年に聖刻文字の解読に成功したのです。
現在、ロゼッタストーンはイギリスの大英博物館に所蔵されており、古代文明研究における最も重要な遺物の一つとして、世界中から多くの観光客が訪れています。