バーン・コック・セッティ遺跡は、タイ・ラーチャブリー県に位置する歴史時代の集落遺跡です。本稿では、その立地環境・地質条件・出土遺物について、ラーチャブリー第1考古学・国立博物館事務所の調査報告に基づいて解説します。
地形と一般的状況
バーン・コック・セッティ遺跡は、トゥン・セッティ遺跡の東方約400メートルに位置しています。現在、遺物が確認されている場所は、コック・セッティ村の民家が立ち並ぶ一帯です。かつて村の外側には、周囲よりも高い丘(マウンド)があり、その面積は約8ライ(約1.28ヘクタール)に及んでいましたが、現在では集落の生活用地としてほぼ平坦に整地されてしまっています(ラーチャブリー第1考古学・国立博物館事務所、1998年:84頁)。
標高
平均海面上7メートル。
地質条件
遺跡の所在地は古い砂州、すなわち完新世初期の旧海岸線上にあたり、現在の海岸からは約4.5キロメートル内陸に入った位置にあります。このことから、遺跡が形成された当時は海にごく近い立地であったことが分かります。
時代と文化
- 考古学的時代:歴史時代
- 時代/文化:ドヴァーラヴァティー期
- 推定年代:仏暦9〜12世紀(?)/仏暦12〜16世紀/仏暦1100〜1600年
- 遺跡の種類:集落跡
出土遺物
ラーチャブリー第1考古学・国立博物館事務所の調査チーム(1997年:84〜85頁)は、本遺跡から以下の遺物を確認しました。
土器片
大量に出土しており、その大半は素焼きの土器です。表面が平滑なものと、縄目文様や化粧土で装飾されたものがあり、器形はドヴァーラヴァティー文化に特徴的な彩色容器です。さらに、シーサッチャナーライ窯で焼成された釉薬をかけた陶器の破片も見つかっています。
ビーズ
調査では青色や赤色のガラス製ビーズがわずかに出土したのみですが、村民の話によれば、かつては大量に発見され、村民が保管していたといいます。その多くはガラス製で、青、緑、藍色、透明・白色など、多彩な色合いを持っていました。
レンガ
少量が出土しています。籾(もみ)を多量に混ぜ込んだレンガで、ドヴァーラヴァティー文化のレンガと類似している点が注目されます。
村民の証言
村民によると、この地域の南約300メートルには、ビーズや土器片などの遺物が多数出土したマウンドが存在していたといいます。しかしながら、現在では土地が耕作され、住宅建設のために整地されたため、当時の痕跡はまったく残っていません。
考察
予備的な調査結果から、本遺跡はドヴァーラヴァティー文化における海岸部の集落であり、近隣のトゥン・セッティ・チェーディー(仏塔)と密接な関係にあったと推察されます。両者は同時期に築造・使用された可能性があります。しかし、現在も村落の住宅が密集して建ち並んでいるため、遺跡は継続的に破壊されつつあり、早急な記録と保存が求められる状況にあります。