古代エジプトの若きファラオ、ツタンカーメンの石棺は、どのような技術と想いをもって造られたのでしょうか。その実像に迫ります。
一枚の巨大な岩から彫り出された石棺
石棺は、ピンクがかった赤色の花崗岩(グラナイト)の一枚岩から彫り出されました。巨大な石材を削り出して棺の形を作るには、高度な採石技術と緻密な計算が必要であり、当時の職人たちの卓越した技量がうかがえます。
また、石棺の蓋は、もともとダベルピン(留め具となる棒状の栓)を使って本体に固定されていました。この構造により、蓋がずれたり外れたりするのを防ぎ、内部を厳かに守っていたのです。
内側と外側、それぞれの意匠
石棺の内部は滑らかに磨き上げられており、ファラオのミイラを安らかに安置できるよう丁寧に仕上げられています。
一方、外部には、ツタンカーメンの生涯と葬儀に関するさまざまな場面が彫刻されました。石棺は単なる容器ではなく、王の死と再生を表現した芸術作品だったといえるでしょう。
『死者の書』に基づく装飾
石棺の装飾には、古代エジプトの宗教文書を集めた『死者の書』の場面が用いられています。
- 死者的導き手であるアヌビス神
- 王権の象徴であるホルス神
- 愛と母性の女神ハトホル神
これらの神々に加え、ツタンカーメン自身の姿も描かれています。
来世を見守る「ホルスの四人の息子」
さらに注目すべきは、ホルスの四人の息子たちの姿です。彼らは内臓を納めるカノポス壺の守護者として知られ、来世において亡きファラオを守護する存在とされていました。
このように、ツタンカーメンの石棺は、素材選びから装飾に至るまで、死後の世界への旅路を支えるための宗教的な意味が随所に込められた、古代エジプト文明の精華ともいうべき遺物なのです。