歴史上の人物

ルネ・デカルト(1596-1650):生涯、思想、主な著作をわかりやすく解説

ルネ・デカルト(1596-1650):生涯、思想、主な著作をわかりやすく解説ルネ・デカルト(René Descartes、1596年〜1650年)は、フランスの哲学者・物理学者・数学者であり、合理主義の理論家として知られています。1637年に出版された『方法序説』は、彼の最も重要な著作です。数学の分野では代数記法を発展させ、解析幾何学を創始しました。デカルトの影響は、マルブランシュの神秘主義やディドロの合理主義といった、対立する哲学思潮にまで及んでいます。近代思想の先駆者の一人であり、哲学の基礎を築いた人物でもある彼は、アリストテレス主義の終焉を象徴的に示しました。今日では「カルテジアン(デカルト的)精神」という言葉が、思考が厳密で論理的な人を表す表現として定着しています。

ルネ・デカルトの略歴

1596年3月31日に生まれたデカルトは、トゥレーヌ地方のラ・エ(現在は「デカルト」と改名された町)の出身です。上流中産階級の家庭に生まれ、父はレンヌ高等法院の顧問官でした。イエズス会の名門ラ・フレーシュ学院で教育を受け、哲学・数学・法学への深い関心によって早くから頭角を現します。ポアティエ大学で法学の学位を取得しましたが、法律家としての道に進むことは拒みました。その後、オランダ総督マウリッツ・ファン・ナッサウ、次いでバイエルン公マクシミリアンの麾下で軍人としての道を歩み始め、三十年戦争の初期の戦役に参加しています。

1625年から1628年にかけては、パリの科学・文学サークルに出入りしましたが、そこに定住することを避け、オランダへ移り住みました。以後、哲学者・学者としての著作活動に専念し、『方法序説』(1637年)、『省察』(1641年)、『哲学原理』(1644年)、『情念論』(1648年)を相次いで出版します。1649年にスウェーデン女王クリスティーナに招かれストックホルムへ向かいましたが、その直後に当地で死去しました。それでも彼は、豊かで革新的な膨大な業績を後世に残しています。

デカルト的思考(カルテジアニズム)

「カルテジアニズム」と呼ばれるデカルトの思想は、科学と哲学を融合させたものです。彼にとって、あらゆる科学はひとつの普遍的な学問に従属します。それが「マテシス・ウニヴェルサリス(普遍学)」、すなわち秩序と尺度を扱う普遍的な学です。1637年、彼は自身の最も重要な著作である『方法序説』(正式名称は「理性を正しく導き、学問において真理を探求するための方法についての序説」)を出版しました。この有名な著作の中で、デカルトは、あらゆる科学が秩序と尺度の普遍的な学に従属するという前提を据えています。

ルネ・デカルト(1596-1650):生涯、思想、主な著作をわかりやすく解説彼のアプローチは、形而上学的観念論と実験的唯物論の両方に根ざしています。こうした立場から、彼は有名な『方法序説』の中で「方法的懐疑」を展開しました。「コギト・エルゴ・スム(我思う、ゆえに我あり)」という定式は、あらゆる思索の出発点であり、論理的推論の力を肯定するものです。この原理によって人間は自然の法則を知り、世界と人間の身体の働きを記述できるとデカルトは考えました。彼は『省察』『情念論』など多くの哲学著作に加え、『屈折光学』『気象学』『幾何学』といった数学・物理学の論文も著しています。なお、ガリレオに近い思想を展開していた『世界論』は、1633年のガリレオ断罪の影響により、生前に出版されることはありませんでした。

カルテジアン思想は近代哲学に絶大な影響を与えました。ディドロ、パスカル、ライプニッツ、マルブランシュ、スピノザらは、いずれもデカルトの業績から大きな着想を得て、新しい問題意識と思索を展開していったのです。

数学と幾何学に展開された方法

カルテジアン的方法の基礎は、「自明であると明確にわからないものは、真として決して受け入れない」という明証の規則への厳格な服従にあります。あらゆる合理的な科学的アプローチは、最も単純な概念から出発し、演繹によって、それに依存するより複雑な概念へと進まなければなりません。数学はまさにこの方法に従う学問であり、したがってあらゆる科学に適用されるべき理想的なモデルとみなされました。デカルトは、未知の値を表すのにアルファベットの末尾の文字(x、y、z)を、既知の値には冒頭の文字(a、b、c)を用いる慣習を定着させました。さらに、数の冪を表す上付き表記(x²)も導入しています。

ルネ・デカルト(1596-1650):生涯、思想、主な著作をわかりやすく解説幾何学における彼の貢献は根本的です。ユークリッド幾何学が実数という算術的構造に基づいていることを確立したのは、ほかならぬデカルトでした。また同時期にピエール・ド・フェルマーとは独立に、方程式と曲線・図形を結びつけることを可能にした解析幾何学の創始に貢献し、デカルト座標(横軸と縦軸)の概念を発展させました。幾何光学の分野では光の屈折の法則を解明し、力学の分野でも、慣性の原理を最初に定式化したのはデカルトです。

ルネ・デカルトの主な著作

  • 1618年:『音楽論』
  • 1628〜1629年:『精神指導の規則』
  • 1633年:『世界論』(生前未刊)
  • 1637年:『方法序説』(『屈折光学』『気象学』『幾何学』を付す)
  • 1641年:『省察』
  • 1644年:『哲学原理』
  • 1649年:『情念論』

さらに学びたい方へのおすすめ書籍

  • 『方法序説』 ルネ・デカルト著(講談社学術文庫ほか各種)
  • 『省察 第一哲学の諸原理』 ルネ・デカルト著(各種文庫版)
  • 『デカルト伝』 ジュヌヴィエーヴ・ロディス=ルイス著