ザンビア出身の経済学者ダンビサ・フェリシア・モヨ(Dambisa Felicia Moyo、1969年生まれ)は、マクロ経済学と国際援助がもたらす影響を専門とする研究者です。鋭い分析と大胆な提言で知られ、2018年には女性経済学者に贈られる賞の候補として読者投票でも高く支持されました。
化学から経済学へ——学歴と研究
ダンビサ・モヨは1969年2月2日、ザンビアの首都ルサカに生まれました。当初はザンビア大学で化学を専攻し、その後アメリカ合衆国へ渡ります。1993年にはワシントンD.C.のアメリカン大学で経営学修士(MBA)を取得しました。
卒業後は世界銀行で数年間勤務し、その後ゴールドマン・サックスに移ってコンサルタント、リサーチャー、マクロ経済チームのストラテジストとして活躍。さらにオックスフォード大学に進学してマクロ経済学を深く研究し、2002年に「途上国における貯蓄」をテーマとした博士号を取得しました。
企業取締役としてのキャリア
2008年にゴールドマン・サックスを退社したダンビサは、2009年に醸造業大手SABMillerの取締役会に加わり、リスク管理、持続可能性、社会的責任に関する業務を統括しました。
2010年にはバークレイズ銀行の取締役に就任し、翌2011年には国際的な鉱業会社バリック・ゴールドの取締役にも名を連ねます。さらに、米国のシーゲイト・テクノロジー、シェブロン、スリーエム(3M)といった大企業の取締役も歴任しており、グローバルビジネスの最前線で幅広く活躍しています。
ベストセラー作家としても著名で、これまでに4冊の経済書を上梓し、いずれもニューヨーク・タイムズのベストセラーリストにランクインしました。著作の成功により世界的な知名度を得た彼女は、経済誌への寄稿、世界各地の金融・経済サミットでの講演、ラジオやテレビへの出演など、多方面で引く手あたたたの存在となっています。
処女作『Dead Aid』——援助はなぜ機能しないのか
処女作『Dead Aid: Why Aid Is Not Working and How There Is Another Way for Africa』において、ダンビサは国際援助がアフリカに与える影響は概ね否定的であり、依存体質を助長し、貧困を固定化させ、腐敗を促進していると大胆に主張しました。そのうえで、途上国が自ら資金を調達し、自立した開発を進める道を提示しています。ハーバード大学の歴史学者ニール・ファーガソンが序文を寄せた本書は、ニューヨーク・タイムズのベストセラーとなり、世界中で大きな反響を呼びました。
2冊目の『How the West Was Lost: Fifty Years of Economic Folly – And the Stark Choices that Lie Ahead』では、西洋諸国の経済的覇権が衰退した過程を分析。3冊目の『Winner Take All: China's Race for Resources and What It Means for the World』は、中国の資源獲得競争とその世界への影響を扱っています。そして2018年刊行の4冊目『Edge of Chaos』では、自由主義民主主義が経済成長の創出に失の創出に失敗しつつあり、抜本的な改革が必要だと訴えました。
受賞と栄誉
2009年、ダンビサ・モヨは米タイム誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に選ばれました。同年にはオプラ・ウィンフリーが挙げる「パワーを持つ20人の女性」リストにも名を連ねています。また、ニュースサイト「ザ・デイリー・ビースト」は彼女を「世界を揺るがす150人の傑出した女性」の一人として紹介しました。2013年には、経済学者フリードリヒ・ハイエクを記念する「ハイエク生涯業績賞」を受賞し、思想面での貢献も高く評価されています。