歴史上の人物

プロコピウスはユスティニアヌス帝への偏見をどう示したのか?同時代史家の筆法を解説

プロコピウスに見るユスティニアヌス帝批判の構造

ビザンツ帝国の歴史家プロコピウス(6世紀)は、ユスティニアヌス帝と同時代を生きた人物であり、その著作の中で皇帝に対する強い偏見を随所に露呈しています。ここでは、その偏見がどのような形で表れているのか、代表的な6つのポイントから見ていきます。

1. 中傷的な言葉遣いの多用

プロコピウスは、ユスティニアヌスに言及する際、しばしば侮蔑的な表現や罵倒を用いています。「最も卑しむべき人間」「無価値で臆病な悪党」「悪魔の化身」といった言葉で皇帝を呼んでおり、その深い敵意が文章の端々から滲み出ています。

2. 否定的出来事の誇張

ユスティニアヌスの治世における負の側面を誇張し、扇情的に描く一方で、肯定的な業績は軽視あるいは無視される傾向があります。軍事的な失敗や行政上の欠陥については詳細かつ生々しく記述する一方、大きな勝利や成果にはほとんど触れないのです。

3. 肯定的情報の意図的な省略

皇帝を好意的に描ける情報は、選択的に省かれています。例えば、ハギア・ソフィア大聖堂の建設に代表される大規模な建築事業や、後世の法体系の基礎となったローマ法の編纂事業など、明らかな功績への言及をあえて避けている点は注目に値します。

4. スキャンダルと汚職の強調

宮廷内のスキャンダルや汚職疑惑が大きく取り上げられ、皇帝は「妻テオドラ皇后に容易に操られる弱い存在」として描かれます。テオドラは冷酷で不道徳な女性として描写されますが、これらの記述には一定の事実が含まれている可能性があるものの、皇帝の評判を落とすために誇張されたと考えられています。

5. 皇帝の敵対者への称賛

名将ベリサリウスやナルセスといった、ユスティニアヌスと距離を置いた・対立関係にあった人物に対しては、肯定的な評価を惜しみません。彼らの軍事的才能や忠誠心を高く評価し、皇帝との対比によって好意的に描き出しています。

6. 歴史的事件の選択的な記述

ユスティニアヌスの否定的なイメージを裏付ける出来事にのみ焦点を当て、皇帝を肯定的に捉えられるかもしれない出来事は最小限に抑えられるか完全に無視されています。こうした選択的な報告の積み重ねが、読者の治世全体に対する認識を形作っているのです。

まとめ

プロコピウスの偏見は、中傷的な言葉の使用、選択的な記述、否定的出来事の誇張、そして皇帝の敵対者への称賛といった形で明白に表れています。もちろん、彼の著作は当時の状況を知るうえで貴重な歴史史料です。しかし、その内容は批判的に分析し、他の史料と照らし合わせてバランスよく読むことで初めて、ユスティニアヌスの治世とその時代についてより包括的で公正な理解が得られるでしょう。