16世紀(1500年代)のイングランドでは、人々の名前は宗教や王室との深い関わりの中で選ばれることが多く、ごく一部の伝統的な名前に人気が集中していました。洗礼名(クリスチャンネーム)として特に好まれたのは、聖書に登場する人物や歴代の王・女王にちなんだ名前です。
男の子に人気のあった名前
当時のイングランドで男の子につけられた名前の上位は以下の通りです。
- ジョン(John) — 聖ヨハネに由来し、圧倒的な人気を誇った定番の名前
- ウィリアム(William) — ノルマン朝以来の王族の名前として広く親しまれた
- トマス(Thomas) — 十二使徒の一人、聖トマスにちなんだ名前
- ロバート(Robert) — 貴族階級にも庶民にも愛された古典的な名前
- リチャード(Richard) — 獅子心王リチャードなどに代表される王家ゆかりの名前
女の子に人気のあった名前
女の子については、次の5つの名前が特によく使われていました。
- メアリー(Mary) — 聖母マリアへの信仰を反映した、最も敬愛される名前の一つ
- エリザベス(Elizabeth) — 後のエリザベス1世の時代に象徴されるように、王室と縁の深い名前
- ジョーン(Joan) — 中世から続く伝統的な女性名で、庶民の間で特に普及していた
- アン(Anne) — 聖アン(聖母マリアの母)に由来する名前
- マーガレット(Margaret) — 聖マーガレットにちなんだ、格式ある印象の名前
なぜこれらの名前が人気だったのか
1500年代のイングランド社会において、名前の選び方は宗教的信仰と密接に結びついていました。プロテスタント改革期にあたるこの時代、聖書の人物名は安全かつ敬意ある選択とみなされました。また、統治者や聖人にちなんだ名前をつけることは、家族の信仰心や社会的価値観を示す手段でもありました。
そのため、現代のように多様な名前が並ぶことは少なく、教区の記録を見ると人口の大部分がわずか十数種類の名前に集約されていたことが分かります。この傾向は17世紀以降もしばらく続き、英語圏の命名文化の基礎となりました。