トーレルンド男の遺体はいつ埋葬されたのか?
1950年、デンマークのビャルスコフ湿原で発見された「トーレルンド男」。泥炭(ピート)地特有の保存環境のおかげで、死後2000年以上経過しているにもかかわらず、その姿は驚くほど良好な状態で保たれていました。しかし一方で、この湿原環境は正確な年代測定を難しくする要因にもなりました。
放射性炭素年代測定(炭素14測定法)を用いた調査の結果、研究者たちはトーレルンド男が紀元前405年から380年の間に死亡したと推定しています。つまり、彼が埋葬されたのは今からおよそ2400年前ということになります。この推定は、死後時間とともに減少していく体内の炭素14の量をもとに算出されたものです。
また、別の年代測定手法である年輪年代学(デンドロクロノロジー)も活用されました。これは木の年輪のパターンから年代を特定する科学的手法です。トーレルンド男が収められていた棺の年輪を分析したところ、その棺が紀元前4世紀に作られたものだと判明しました。この結果は、放射性炭素年代測定による推定年代を裏付けるものとなっています。
さらに、遺体の身体的特徴からも彼の年齢を推定できます。歯は非常によく保存されており、大きな健康上の問題も見られないことから、死亡時には比較的健康な状態だったと考えられます。これらの特徴から、トーレルンド男は30歳から40歳程度で亡くなったと推測されています。
この推定を裏付ける証拠
トーレルンド男が約2400年前に埋葬されたという推定の根拠となっているのは、主に次の2つの科学的測定手法です。
1. 放射性炭素年代測定
生物は生きている間、大気中から炭素14を取り込み続けますが、死後はその取り込みが止まり、体内の炭素14は半減期(約5730年)に従って減少していきます。遺体に残された炭素14の量を測定することで、死亡した年代を科学的に割り出すことができるのです。
2. 年輪年代学(デンドロクロノロジー)
樹木は成長の過程で毎年年輪を作ります。地域ごとの気候変動が年輪の幅や模様に反映されるため、既知の年輪パターンと照合することで、木材の正確な年代を特定できます。棺の材木の分析により、紀元前4世紀という年代が導き出されました。
この2つの独立した手法による測定結果が互いに一致していることから、トーレルンド男が鉄器時代前期の約2400年前に埋葬されたという結論は、極めて信頼性の高いものとされています。