歴史上の人物

ペギー・グッゲンハイムとはどんな人物?20世紀現代美術を支えた収集家の生涯と功績

ペギー・グッゲンハイム(1898年8月26日〜1979年12月23日)は、アメリカ出身の美術収集家、パトロン(後援者)、そして美術館創設者です。1930年代から収集を始めたモダンアートのコレクションで広く知られ、晩年に至るまでその活動を続けました。1951年にはイタリア・ヴェネツィアに「ペギー・グッゲンハイム・コレクション」を開館し、現在も世界屈指の近代美術館として運営されています。

生い立ちと教育

ペギー・グッゲンハイムは、ニューヨークの裕福な鉱業実業家ベンジャミン・グッゲンハイムと、フロレット・セリグマン・グッゲンハイムの娘として生まれました。ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館を創設したソロモン・R・グッゲンハイムは、彼女の叔父にあたります。教育はニューヨークのブリヤリー・スクールで受け、その後パリのソルボンヌ大学でも学びました。国際的な環境に身を置いた経験が、後にヨーロッパの前衛芸術との関わりへとつながっていきます。

美術コレクションの始まり

グッゲンハイムが本格的に作品収集を始めたのは1930年代初頭のことです。当初から主眼を置いたのはモダンアート、とりわけヨーロッパの前衛芸術でした。パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック、ジョアン・ミロ、ワシリー・カンディンスキーといった巨匠たちの作品を積極的に買い求めました。また、アメリカ人作家に対しても目を向け、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、クリフォード・スティルらの作品も収集しています。特にポロックのキャリア初期を経済的にも精神的にも支えたことは、美術史上でも重要な逸話として知られています。

ペギー・グッゲンハイム・コレクションの開館

1949年、グッゲンハイムはイタリアのヴェネツィアに移住し、グランドカナル(大運河)沿いに建つ「ヴェニエ・デイ・レオーニ宮殿」を購入しました。1951年、この宮殿を美術館として一般公開したのが、ペギー・グッゲンハイム・コレクションです。館内には、20世紀美術を代表する最重要作家たちによる200点以上の作品が収蔵されており、キュビスム、シュールレアリズム、抽象表現主義など、モダンアートの主要な潮流を一望できる貴重な場所となっています。

20世紀美術界への影響

グッゲンハイムは、20世紀のアート界において欠かせない存在でした。収集家・パトロンとしての影響力は計り知れず、多くの重要な芸術家たちのキャリア確立を支えただけでなく、モダンアートをより幅広い層の人々に紹介する橋渡し役ともなりました。彼女の情熱的な支援がなければ、今日私たちが知るような戦後美術の発展はあり得なかったと言っても過言ではありません。ペギー・グッゲンハイム・コレクションは今なお、世界で最も重要な近代美術館の一つであり続けています。

私生活

私生活においても、グッゲンハイムは芸術文化と深く結びついた人生を送りました。最初の結婚相手はローレンス・ヴェイルで、二人の間には二人の娘が生まれました。二度目の結婚相手はドイツ出身の画家マックス・エルンストです。結婚以外でも、マルセル・デュシャン、サミュエル・ベケット、エズラ・パウンドなど、当時を代表する芸術家や作家、知識人たちと交流を持ち、彼女の周りには常に前衛的な才能が集まっていました。

遺されたもの(レガシー)

グッゲンハイムは1979年、81歳でヴェネツィアにてこの世を去りました。自身の美術コレクションはすべてペギー・グッゲンハイム・コレクションに遺贈され、同美術館は今日もヴェネツィアで営みを続けています。モダンアートのパトロンとしての彼女の功績は色あせることなく、そのコレクションは20世紀美術を研究するうえで最も重要な資料の一つとして、世界中の人々を惹きつけ続けているのです。