かつて「日の沈まぬ国」と呼ばれた大英帝国。しかし、「イギリス(Britain)」と「イングランド(England)」は厳密には異なる概念であり、それぞれの時代において支配・統治した地域の性質も異なります。ここでは、両者が持っていた植民地や支配地域を、移住型・搾取型・貿易型という3つの類型に分けて解説します。
イギリス(英国)が持っていた植民地
1707年のグレートブリテン王国成立以降、19世紀から20世紀初頭にかけて絶頂期を迎えた大英帝国は、世界史上最大級の帝国へと発展しました。その植民地は目的に応じて以下のように分類できます。
1. 移住型植民地(入植者植民地)
本国から大量のイギリス人移民が渡り、恒久的な定住社会を築いた植民地です。北米の13植民地(後のアメリカ合衆国)、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどが代表例で、これらの地域ではヨーロッパ式の政治・社会制度が根付きました。
2. 搾取型植民地
鉱物資源や農産物などの資源を本国に送り出すことを主目的とした植民地です。インド、ビルマ(現ミャンマー)、マラヤ(現マレーシア)などが典型例で、綿花、茶、ゴム、錫などの生産拠点として機能しました。
3. 貿易拠点としての植民地
交易と戦略的な位置取りを主な目的として獲得された拠点です。香港、シンガポールなどが代表例で、東西貿易の中継地として繁栄し、自由港としての役割を果たしました。
イングランドが持っていた植民地・支配地域
次に、グレートブリテン王国成立以前のイングランド単体、あるいはイングランドを中心とした支配圏を見てみましょう。
1. 移住型植民地
17世紀以降、イングランド人移民が北米の13植民地を建設したほか、カリブ海ではバルバドスやジャマイカに入植し、サトウキビを中心とするプランテーション経済を発展させました。
2. 支配・搾取の対象となった地域
アイルランド、ウェールズ、スコットランドは、厳密には海外植民地ではありませんが、イングランドによる征服・併合・支配の歴史を持つ地域です。特にアイルランドは土地の没収や入植政策(プランテーション)など、実質的に植民地的な扱いを受けました。
3. 貿易・戦略的拠点
チャンネル諸島とマン島は、現在も王室属領(クラウン・ディペンデンシー)として存続しており、厳密な意味での植民地ではありませんが、イングランド王冠と深い歴史的関係を持つ特別な地位の地域です。
まとめ
イギリスの植民地は、北米やオーストラリアのような移住型、インドやビルマのような搾取型、そして香港やシンガポールのような貿易拠点型に大別されます。一方、イングランドの場合は、北米・カリブへの入植に加え、アイルランドやウェールズといった近隣地域の支配、さらにチャンネル諸島やマン島との歴史的な結びつきが特徴です。「イギリス」と「イングランド」の時代区分と支配形態の違いを理解することで、大英帝国の全体像がより明確になります。