1066年は、ノルマンディー公ウィリアムがイングランドを征服した「ノルマン・コンクエスト」の年として知られています。しかし、その前にイングランド(ブリテン島)を支配した民族がいくつも存在しました。本記事では、1066年以前にイングランドを占領・統治した代表的な3つのグループについて解説します。
1. ケルト人(Celts)
ケルト人は、ブリテン島とアイルランドにおける最古の住民とされる民族です。紀元前600年頃にヨーロッパ大陸から移住してきたと考えられており、イングランド各地に数多くの王国や独自の文化を築き上げました。
ケルト系民族には、主に以下のような集団が含まれます。
- ブリトン人(Britons):ブリテン島南部を中心に暮らし、「ブリタニア」という地名の由来となった民族
- ピクト人(Picts):現在のスコットランド北部に居住していた民族
- ゲール人(Gaels):アイルランドおよびスコットランド西部に広がった民族
彼らは独自の言語であるケルト語派の言語を話し、今日でもウェールズ語やゲール語などの形でその影響が残っています。
2. ローマ人(Romans)
西暦43年、ローマ帝国は皇帝クラウディウスの指揮のもとブリテン島への侵攻を開始しました。以降、ローマは約400年間にわたってこの地を統治し続けます。
ローマ人の支配は、イングランドに大きな変革をもたらしました。彼らが持ち込んだものには次のようなものがあります。
- ラテン語による行政・法律体系
- 石造りの建築技術(浴場、神殿、城壁など)
- 幹線道路網の整備
- 都市文化(ロンディニウム=現在のロンドンなど)
有名な「ハドリアヌスの長城」も、この時期に北方からの侵入を防ぐ目的で建設されました。5世紀初頭、ローマ帝国の衰退とともに軍団が撤退すると、ブリテン島は再び混乱の時代へと入っていきます。
3. アングロサクソン人(Anglo-Saxons)
ローマ軍撤退後の5世紀頃から、アングル人、サクソン人、ジュート人といったゲルマン系の部族たちが、北欧(現在のドイツ北部やデンマーク周辺)から海を越えてブリテン島へ移住・侵攻を始めました。これらの民族を総称して「アングロサクソン人」と呼びます。
彼らは次第にイングランドの大部分を征服し、7世紀頃までに「七王国」と呼ばれる複数の王国を確立しました。主要な王国には以下があります。
- ウェセックス王国(Kingdom of Wessex):後にアルフレッド大王を輩出し、イングランド統一の中核となる
- ノーサンブリア王国(Kingdom of Northumbria):北部で宗教・学問の中心として栄える
- マーシア王国(Kingdom of Mercia):中部に勢力を誇った強大な王国
アングロサクソン人が話した古英語は、現代英語の直接的な基礎となりました。また、彼らの文化や法制度も後のイングランド社会に深く根付いています。
まとめ
1066年以前のイングランドの歴史は、ケルト人による古代文化の形成、ローマ人による約400年間の高度な文明の導入、そしてアングロサクソン人による王国の建設という3つの大きな流れによって築かれてきました。1066年のノルマン・コンクueストは、こうした長い歴史の上に起こった出来事であり、イングランドの言語・文化・政治体制をさらに大きく変える転換点となったのです。