イギリスでは、長い歴史の中で君主の絶対的な権力が段階的に制限されてきました。その中核を担っているのが議会です。ここでは、君主の権力を制限してきた議会の重要な権利を3つ紹介します。
1. 法案への国王裁可(さいか)
議会で可決された法案は、君主による裁可(Royal Assent)を受けて初めて法律として成立します。理論上、君主は裁可を拒否することで法案を無効にできる権限を持っています。
しかし、この権限は現在ほぼ形骸化しています。イギリス君主が法案への裁可を拒否したのは18世紀が最後であり、それ以降は一度も行われていません。現代では、裁可は形式的な手続きとなっています。
2. 課税と財政支出に対する議会の統制
君主は、議会の同意なしに税金を徴収したり、国庫から資金を支出したりすることができません。これは「課税には議会の承認が必要」という原則に基づくもので、17世紀の市民革命期に確立されました。
この制度により、議会は君主の財源を管理する立場にあり、結果として君主の政治的・軍事的な行動にも大きな制約を課すことができます。
3. 君主を弾劾する議会の権利
議会には、君主を弾劾(impeachment)し、その職を追う権利があります。これは君主の権力濫用に対する最終的な牽制手段です。
ただし、この権利が実際に行使されたのはイギリス史上一度だけです。1649年、議会は国王チャールズ1世を裁判にかけ、処刑しました。この出来事は、王権神授説に対する根本的な挑戦であり、立憲君主制への道を開く転換点となりました。
まとめ
法案への裁可、課税と支出の統制、そして弾劾権――これら3つの権利は、イギリスにおける「議会主権」の伝統を支える柱です。君主の権力は名目上残っていても、実際の統治は民主的に選ばれた議会の手に委ねられているのです。