ギリシャ・ペロポネソス半島南部、メッシニア地方のアルギリ(Argili)地区には、ギリシャ全土でもこの形態を持つ唯一の城といわれる不思議な建造物が佇んでいます。
おばあちゃんの語るおとぎ話を現実に
その名も「おとぎ話のお城」。1960年代に、ハラランボス・フールナラキス――通称「ハリー・フルニエ」として知られる人物によって建てられました。彼は、昔ながらにおばあちゃんたちが語ってくれたおとぎ話の世界を、自らの手で現実に再現しようとしたのです。
時代も場所も異なる物語がひとつに融合
城内には、トロイア戦争やギリシャ独立戦争といった時代も場所も異なる物語が混ざり合って組み込まれ、さらにギリシャ神話の登場人物たちの姿もあちこちに見られます。数多くの塔や小窓、甲冑が飾られた館内は、まるで絵本の世界に迷い込んだかのような幻想的な雰囲気に包まれています。
ホテル、博物館、そして舞台として栄えた past
かつてこの城はホテルや博物館、レクリエーション施設として利用され、折にふれて演劇公演が開催されることもありました。地元の人々にとって、大切な文化交流の場だったのです。
歳月と潮風に耐え、今も誇らしく
現在、城は管理団体による維持が困難となっており、長い歳月と塩害による浸食にさらされながらも、今なお誇らしく佇んでいます。しかし確かなことがひとつあります。それは、訪れる人々の心を一瞬にしてつかんで離さないということです。一目見ただけで、誰もが子どもの頃の自分を思い出すでしょう。あんなにも無邪気で、何も恐れることのなかった、いつしか忘れかけた懐かしい日々を。