歴史物語

ナンシー・アスターとウィンストン・チャーチル:歴史に残る痛快な口論

ナンシー・アスターとウィンストン・チャーチル:歴史に残る痛快な口論

イギリス史上初の女性庶民院議員として名高いレディ・ナンシー・アスター。彼女とウィンストン・チャーチルの間で交わされた数々の言葉の応酬は、今日まで語り草となっています。

アメリカ生まれ、イギリス初の女性議員

ナンシー・アスターは本名をナニー・ウィッチャー・キーンといい、アメリカ合衆国に生まれました。1900年代初頭、海峡を渡ってイギリスへ移住し、後に貴族となるウォルドーフ・アスターと結婚します。そして1919年の総選挙で当選を果たし、実際に議席に着いて政治活動を行ったイギリス初の女性議員となりました。

当時としては画期的な出来事であり、その当選はイギリス政治史における大きな転換点として記録されています。

信念を貫いた政治家

確固たる保守主義者だったナンシーは、特に女性の地位向上や教育問題といったテーマに深い関心を持ち、自らの信じる政策を議会で力強く推し進めました。

闘志にあふれ、物事をはっきりと言う性格だった彼女は、議会においてウィンストン・チャーチルと幾度となく激しく対立することになります。二人の間で交わされた口論の中には、後世にまで語り継がれるものがいくつもありました。

「毒入りコーヒー」の有名なやり取り

その中でも最も有名で、そしておそらく最も微笑ましい逸話がこちらです。

ある国会審議の最中、ナンシー・アスターはついに堪忍袋の緒が切れ、チャーチルに向かってこう言い放ちました。

「ウィンストン、もしあなたが私の夫だったら、あなたのコーヒーに毒を入れてやるわ!」

ところが、皮肉と機転の名人として知られたチャーチルは、この挑発に対して一瞬も迷わずこう切り返したのです。

「ナンシー、もしあなたが私の妻だったら、喜んでそれを飲むとも!」

鋭いウィットに満ちたこの応酬は、聞く者すべてを驚かせ、100年以上経った今なお、多くの人々を魅了し続けています。