時計の発明:15世紀後半のルネサンス期
現在私たちが知るような小型の携帯時計(懐中時計の原型)は、ルネサンス末期から近世初頭にかけて、15世紀後半のヨーロッパで誕生したとされています。ただし、その「世界初」の座を誰に与えるかについては、複数の説が存在します。
ドイツのペーター・ヘンライン説
最も広く知られている説では、ドイツ・ニュルンベルクの職人ペーター・ヘンライン(Peter Henlein)が、1480年頃に世界初の携帯用時計を製作したとされます。彼はゼンマイ動力を用いた小型時計機構の先駆者として名高く、後に「ニュルンベルクの卵」と呼ばれる卵型の懐中時計とも結び付けられて語られることがあります。
プラハのヤーコプ・ツェッヒ説
一方で、優先権はボヘミア(現チェコ)のプラハで活動した時計職人ヤーコプ・ツェッヒ(Jacob Zech)にあるとする資料もあります。彼は1481年から1483年にかけて、貴族レオ・フォン・ロズミタル(Leo von Rozmital)のために時計を製作したと伝えられており、これを最古の携帯時計とみなす見解もあります。
ゼンマイ動力がもたらした技術革新
それまでの機械式時計は、おもりの重力を利用した駆動方式であったため、教会や塔に設置される大型のものに限られていました。15世紀にゼンマイ(ぜんまいばね)動力が実用化されたことで、時計は初めて手に持てるサイズへと小型化しました。これこそが、携帯時計誕生の技術的な背景です。
なお、初期の携帯時計は精度が低く、文字盤には時針しかありませんでした。分針が登場したのは17世紀に入ってからであり、当時の時計は正確性よりも、所有者の富や社会的地位を示す装身具としての役割が強かったといわれています。
まとめ
時計の起源には諸説ありますが、1480年頃にドイツ・ニュルンベルクのペーター・ヘンラインが製作したという説が有力視される一方、1481年〜1483年にプラハのヤーコプ・ツェッヒがレオ・フォン・ロズミタル向けに製作した時計を最古とする見解もあります。いずれにせよ、ルネサンス期のヨーロッパで携帯可能な時計が誕生したことは、その後数百年にわたる時計技術の発展における重要な転換点となりました。