アメリカで長年親しまれてきた朝食用の小麦粥「クリーム・オブ・ウィート(Cream of Wheat)」。そのパッケージに描かれた微笑みを浮かべた黒人シェフの姿は、多くの人々に強い印象を残してきました。「この人物は『ラスタス(Rastus)』という名前の実在の人物なのか?」と疑問に思った方も少なくないでしょう。本記事では、この象徴的なキャラクターの正体と歴史的背景を詳しく解説します。
箱のモデルは実在のシェフ、フランク・L・ホワイト
結論から言えば、「ラスタス」という名前の人物がパッケージのモデルになったわけではありません。実際に箱の肖像画のモデルとなったのは、フランク・L・ホワイト(Frank L. White)という実在のプロのシェフです。彼は20世紀初頭、同社によってシェフ役として起用され、撮影された写真をもとにした姿が長年にわたり商品パッケージに使用されてきました。
ホワイトは1938年に亡くなりましたが、その墓標には「クリーム・オブ・ウィートのモデル」と刻まれており、彼が実在のモデルであったことを裏付けています。
「ラスタス」は広告上の架空のキャラクター
一方で、「ラスタス」という名前自体は、20世紀初頭に広告関係者が考案した架空のキャラクターでした。当時のクリーム・オブ・ウィートの印刷広告には、このキャラクターが登場し、独自の言葉遣いで製品を紹介する演出が行われていました。
ただし、「ラスタス」はあくまでマーケティング資料上の存在であり、公式なマスコットとして正式に定着したわけではありません。似たようなキャラクターは、他社の商品広告にも見られました。
差別的ステレオタイプへの批判と使用終了
時代が進むにつれ、「ラスタス」という名前やそれに付随する表現は、黒人に対する否定的な人種的ステレオタイプを想起させるものとして批判を受けるようになりました。こうした世論の変化を受け、企業は当該キャラクターの使用を最終的に取りやめることとなりました。
さらに近年では、パッケージのシェフのイメージ全体も再評価の対象となり、現在のクリーム・オブ・ウィートの包装からはシェフの姿が取り除かれています。
まとめ
クリーム・オブ・ウィートの箱に描かれたシェフは、「ラスタス」という架空の人物ではなく、実在のシェフであるフランク・L・ホワイトがモデルです。「ラスタス」は初期の広告で使われた架空のキャラクター名であり、人種的なステレオタイプへの批判を受けて使用が廃止されました。こうした歴史的経緯を知ることで、アメリカの広告史や社会の変遷についてより深く理解することができるでしょう。