ハワード・ジンの代表作『アメリカ人民の歴史(A People's History of the United States)』において、大恐慌について本格的に論じられているのは第15章「Self-Help in Hard Times(困難な時代の自力救済)」です。
この章では、1929年の株式市場暴落に始まる大恐慌が、エリートではなく一般の人々――労働者、農民、失業者――の視点から描かれています。従来の歴史書がフランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策を英雄的な成功譚として語るのに対し、ジンはそれを危機に瀕した資本主義体制を守るための政治的工夫として批判的に分析している点が大きな特徴です。
第15章の主な内容
- 1929年のウォール街株価暴落と、それがもたらした経済的・社会的混乱
- 失業者や貧困層の過酷な実態、およびフーバー政権の対応の限界
- 1930年代に高揚した労働運動(ゼネラル・ストライキや工場占拠ストライキなど)
- ニューディール政策の実態に対する批判的検証
関連して読みたい箇所
大恐慌やニューディールに関連するテーマは、ほかの章にも部分的に登場します。たとえば第11章「Robber Barons and Rebels(強盗男爵と反逆者たち)」では、恐慌の背景となる独占資本の形成が扱われており、あわせて読むことでジンの歴史観をより深く理解できます。
「人民の側から見た歴史」という独自の視点でアメリカ史を描く本書の中でも、第15章は現代の経済格差や社会政策を考えるうえで示唆に富む一章といえるでしょう。