歴史物語

結婚すると妻の財産はどうなった?——イギリス普通法における女性の財産権の歴史

結婚とともに失われた妻の財産権

1932年以前のイギリスの普通法(コモン・ロー)では、女性が結婚すると、婚姻の時点で自身が所有していた動産——家具や家庭用品などの家庭内動産を含む——に対する一切の実益的な権利(受益権)を失うことになっていました。これらの財産は、結婚と同時に自動的に夫の絶対的な所有物へと移転したのです。

なぜ妻の財産は夫のものになったのか

当時の法制度では、夫婦は法的に「一つの人格」とみなされ、その代表は夫であると考えられていました。そのため、妻が婚姻前に保有していた個人財産は、結婚を機に法的にはすべて夫に帰属し、妻は自らの財産を自由に処分したり、そこから利益を受け取ったりする権利を事実上持てなくなりました。

その後の法改正

この不合理な制度は、既婚女性の財産権をめぐる社会の批判を背景に、既婚女性財産法(Married Women's Property Acts)などの立法によって段階的に改正されていきました。これにより、既婚女性も自己の財産を独立して保有し、自由に管理・処分できるようになり、夫婦の財産に関する法的地位は大きく改善されました。