ジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)が個人的な日記を書いたという記録や証拠は、歴史上一切確認されていません。古代ローマの時代には、今日のような私的な日記を残す習慣は一般的ではなく、現存する資料の中にもカエサルの日記に該当するものは見つかっていません。
カエサルが実際に遺した著作は「ガリア戦記」
ただし、カエサル自身の手による著作がまったく存在しないわけではありません。彼は自身が指揮したガリア遠征について、『ガリア戦記』(ラテン語原題:Commentarii de Bello Gallico)という歴史書を著しています。
この作品は、紀元前58年から紀元前50年にかけて行われたガリア(現在のフランス周辺)への軍事作戦を記述したもので、古代ローマ史における最重要文献の一つとされています。簡潔で明晰なラテン語文体は高く評価され、後世のラテン語教育の教科書としても広く用いられてきました。
『ガリア戦記』の主な特徴
- 全8巻構成で、各年の戦役ごとに記述されている(第8巻は部下のアウルス・ヒルティウスによる追補)
- 客観的で事務的な文体を装いながら、自らの功績を効果的にアピールする政治的プロパガンダの側面も持つ
- 当時のケルト系諸民族の生活や風俗に関する貴重な記録を含んでいる
つまり、「カエサルの日記」と呼べるものは存在しないものの、彼自身が書き残した『ガリア戦記』を読むことで、その思考や行動の痕跡に直接触れることができるのです。