アフリカの歴史

奴隷船ゾン号で何が起きていたのか?―大西洋奴隷貿易最悪の悲劇

奴隷船ゾン号の劣悪な船内環境

奴隷船ゾン号の船内状況は、想像を絶するほど悲惨で非人道的なものでした。400名を超える奴隷化された人々が、狭い船倉にぎゅうぎゅうに詰め込まれていました。彼らは鎖で身体を繋がれ、汚物の中で横たわることを強いられたのです。

船内は高温多湿で、換気はほとんど行き届いていませんでした。こうした環境の中で、病気、栄養失調、そして虐待により、多くの人々が次々と命を落としていきました。

ゾン号虐殺事件の経緯

1781年11月、ゾン号は400名以上の奴隷化されたアフリカ人を積載し、アフリカを出航しました。ところが航海の途中、ルーク・コリングウッド船長は、保険金を請求することを目的として、乗組員に対し133名もの人々を海へ投げ込むよう命じました。

この命令を拒否しようとした乗組員には暴力がちらつかされ、結果的に多くの人々が抵抗できないまま海に投げ込まれました。投げ込まれた人々は溺死するか、あるいはサメに襲われるという凄惨な最期を遂げたのです。

当時の海上保険制度では、「水不足」などのやむを得ない事情による積荷の投棄は保険金支払いの対象とされていました。つまり、船側は奴隷とされた人々をあくまで「商品」として扱い、その尊い命を金銭に換算していたのです。

歴史に残る教訓

ゾン号虐殺事件は、大西洋奴隷貿易の残虐性を示す最も恐ろしい事例の一つとして記録されています。この事件の報道は、イギリスの廃止論者(アボリショニスト)たちに大きな衝撃を与え、後の奴隷貿易廃止運動の重要な転機となりました。

ゾン号の悲劇は、人間の人間性を否定し、命を軽んじた行為への永遠の警鐘として、今日でも世界中で語り継がれています。