19世紀初頭、ベンガル地方で活動したイスラーム改革家ハジ・シャリアット・ウッラー(Haji Shariatullah)が始めた運動は、「ファラーイズ運動(Faraizi Movement)」として知られています。
名称の由来:「ファラーイズ」とは何か
この運動がファラーイズ運動と呼ばれる最大の理由は、その中核にイスラームにおける義務的行為(ファラーイズ、fara'iz)への厳格な遵守を掲げていた点にあります。「ファラーイズ」とは、すべての信者が必ず果たさなければならない宗教上の義務を指す言葉です。
重視されたイスラーム五行
運動では、以下のようなイスラームの基本的義務(五行)を忠実に実践することが強調されました。
- 礼拝(サラー)
- 断食(サウム)
- 喜捨(ザカート)
- メッカ巡礼(ハッジ)
慣習や異端(ビドア)への反対
当時のベンガル農村部では、ヒンドゥー教の影響を受けた慣習や、聖者崇拝などの土着的な信仰形態が広く浸透していました。シャリアット・ウッラーは、こうした慣行的な実践や新たに付け加えられた風習(ビドア、bid'ah)をイスラームの原則からの逸脱であるとみなし、それらを排除することによって宗教実践の純化を目指しました。
宗教改革にとどまらない社会的意義
ファラーイズ運動の影響は宗教面だけにとどまりませんでした。運動は抑圧的な地主階級やイギリス植民地当局に対抗する農民の団結を促し、社会正義の実現と弱者の権利擁護においても重要な役割を果たしました。
このように、厳格な義務履行の徹底と不純な要素の排除という明確な理念をもっていたことが、この運動が「ファラーイズ運動」という名で歴史に刻まれた理由です。