北米の歴史

ノースカロライナ州ではコカインやヘロインの所持にも「税金」がかかる?奇妙な未認可物質税の実態

アメリカ・ノースカロライナ州では、2005年以降、違法薬物(コカイン、ヘロイン、密造酒など)の所持そのものに対して税金が課されるという、世界的に見ても非常に珍しい制度が存在します。

この制度に従うには、対象となる物質のために「印紙(スタンプ)」を購入しなければなりません。しかも、その購入は匿名で行うことが可能です。一方で、当然ながらこうした物質の使用や販売自体は法律で禁止されています。税金だけは払え、というこの矛盾した仕組み。果たして何のための制度なのでしょうか?収税活動の一環なのでしょうか?

ノースカロライナ州歳入庁の公式FAQから

「そんなバカな話があるはずがない」と思われる方のために、ノースカロライナ州歳入局(Department of Revenue)が公表しているFAQを翻訳・再構成してご紹介します。

未認可物質税とは何ですか?

「未認可物質税(Unauthorized Substances Tax)」は、規制物質(マリファナ、コカインなど)、密造酒(いわゆる「ムーンシャイン」)、もろみ、および違法な混成酒に対して課される特別な税金です。

誰が納税義務を負いますか?

印紙によって納税が証明されていない未認可物質を所持するすべての個人に、納税義務があります。

いつ税金を支払うのですか?

未認可物質を入手してから48時間以内に納税しなければなりません。納税の証明は、印紙を貼付することによって示されます。

納税時に身元を明かす必要はありますか?

いいえ、必要ありません。歳入局から印紙を購入する人は、氏名、住所、社会保障番号などの個人情報を提出する義務がありません。

支払った後に受け取った印紙はどうすればいいですか?

印紙は、該当する未認可物質に恒久的に貼り付けなければなりません。納税が完了し印紙が貼られた物質は、追加の課税なしに取り扱ったり売買したりできることになります。

歳入局は印紙の購入情報を警察などに通報しますか?

いいえ。未認可物質税法に基づいて取得された情報は機密情報として扱われ、同法違反に関する訴訟以外の刑事手続きに開示されたり利用されたりすることはありません。

この税収はどのように配分されますか?

徴収された資金の75%は、州または地方の法執行機関に還元されます。残りの25%は一般財源(General Fund)に繰り入れられます。

印紙を買えば、薬物の所持が合法化されるのですか?

いいえ。印紙の購入はあくまで納税義務を果たすだけです。ノースカロライナ州の刑事法上、薬物所持の違法状態には変わりなく、依然として違法行為となります。

申請書や詳細情報はどこで入手できますか?

問い合わせ先は 1-877-308-9103(ノースカロライナ州歳入局)です。

なぜこんな奇妙な税制が存在するのか

一見すると矛盾だらけに思えるこの制度ですが、その狙いはシンプルです。密造酒や違法薬物の押収現場で、税務上の「未納税」を立件できれば、刑事事件の立証ハードルが高い場合でも確実に罰則を科せるという点にあります。実際、アル・カポネが脱税罪で逮捕されたように、「犯罪そのものより税の未納の方が立件しやすい」という手法は歴史的にも使われてきました。

匿名での印紙購入が認められているのは、納税者の協力を促すためであり、同時に税関当局が情報を刑事手続きに流用できないことも明記されています。税と刑法が絡み合う、アメリカならではの独特な制度と言えるでしょう。