北米の歴史

アメリカにおける外国人排斥の歴史――いつ、どのような出来事が起こったのか?

アメリカは「移民の国」と呼ばれる一方で、その歴史の中で幾度となく外国人排斥(ゼノフォビア)の波に見舞われてきました。特定の民族や宗教への偏見が、差別や暴力、さらには国家的な政策として現れた事例は少なくありません。ここでは、アメリカ史上の代表的な外国人排斥の事例を時系列でご紹介します。

1. アイルランド移民への排斥(19世紀半ば)

19世紀半ば、大飢饉をきっかけに大量に渡米したアイルランド移民は、「アメリカ人の仕事と文化への脅威」とみなされ、激しい排斥運動の標的となりました。1850年代には反カトリック・反移民を掲げる「ノウ・ナッシング党(Know Nothing)」の排外主義運動が広がり、暴動や就職差別などが各地で発生しました。

2. 中国人排斥法(1882年)

1882年に成立した「中国人排斥法(Chinese Exclusion Act)」は、特定の民族を対象とした連邦レベルの移民制限法としてはアメリカ初となる歴史的な法律です。この法律により中国人労働者の移民が禁止され、在米中国人は財産の取得や帰化など、基本的な権利を大きく制限されました。

3. イタリア系移民へのリンチ(19世紀末~20世紀初頭)

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、特に南部を中心にイタリア系移民に対する暴力や私刑(リンチ)が複数発生しました。1891年のニューオーリンズでのリンチ事件のように、集団的な暴力が公然と行われたケースもありました。

4. 第一次世界大戦中のドイツ系住民への迫害

第一次世界大戦中、敵国ドイツとの戦争を背景に、ドイツ系移民やドイツ系アメリカ人への疑念と敵意が一気に高まりました。ドイツ語の使用が禁じられたり、ドイツ系と疑われるだけで嫌がらせや暴力を受けることもあり、社会全体に強い排斥ムードが広がりました。

5. 日系アメリカ人の強制収容(第二次世界大戦)

アメリカ史上最も有名な排斥事件の一つが、第二次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容です。真珠湾攻撃を契機に、12万人以上の日系人が――その多くはアメリカ市民でしたが――自宅から強制的に立ち退かされ、内陸部の収容所に抑留されました。この政策は後に政府によって不当なものと認められ、1988年に補償法が成立しています。

6. 9.11テロ以降のイスラム教徒への排斥

2001年の同時多発テロ(9.11)以降、イスラム教徒や中東・南アジア系とみられる人々に対する排斥感情が急速に高まりました。ヘイトクライム、職場や日常での差別、イスラモフォビア(イスラム恐怖症)の拡大などが深刻な社会問題となりました。

まとめ

以上のように、アメリカの歴史において外国人排斥は特定の時代だけの現象ではなく、経済不安や戦争、テロといった社会的危機のたびに繰り返されてきました。これらの歴史を知ることは、今日の移民政策や多文化共生を考える上でも重要な教訓となるでしょう。