1860年、南北戦争前夜のアメリカ合衆国において、石炭は産業革命と鉄道網の拡大を支える最重要資源の一つでした。当時すでに知られていた主要な石炭鉱床は、大きく5つの炭田・石炭地域に分類できます。ここでは、それぞれの地域の特徴と、鉱床が分布していた州をご紹介します。
1. アパラチア炭田(Appalachian Basin)
当時のアメリカ最大かつ最も重要な石炭産出地域です。特にペンシルベニア州東部の無煙炭(アンサイト)は、東部諸都市の暖房や鉄鋼業に不可欠な燃料として高く評価されていました。
- ペンシルベニア州
- ウェストバージニア州
- メリーランド州
- バージニア州
- ケンタッキー州(東部)
- テネシー州
- アラバマ州
- ジョージア州(北西部)
2. イリノイ炭田(Illinois Basin)
中西部の工業化や蒸気船・鉄道の燃料供給を担った、広大な瀝青炭(ビチュメナス)地帯です。シカゴ周辺の急速な都市発展を支えました。
- イリノイ州
- インディアナ州(南西部)
- ケンタッキー州(西部)
3. 中部内陸石炭地域(Western Interior Coal Province)
ミシシッピ川流域から南部へと広がる地域で、1860年当時はまだ開発の初期段階にありました。
- アイオワ州
- ミズーリ州
- カンザス州(東部)
- オクラホマ州(当時はインディアン準州)
- アーカンソー州
- テキサス州(北部)
4. ロッキー山脈石炭地域(Rocky Mountain Coal Province)
西部開拓の進展とともに本格的な開発が始まった山岳地帯の炭田群です。当初は鉄道や鉱山町向けの燃料として採掘されました。
- コロラド州
- ワイオミング州
- モンタナ州
- ユタ州
- ニューメキシコ州
- アリゾナ州
5. 太平洋岸石炭地域(Pacific Coast Coal Province)
ゴールダン・ラッシュ後の西海岸の経済発展を支えた沿岸部の炭田です。サンフランシスコや蒸気船への燃料供給の拠点となりました。
- ワシントン州
- オレゴン州
- カリフォルニア州
まとめ
1860年の時点で、生産量および経済的重要性の両面で突出していたのはアパラチア炭田、とりわけペンシルベニア州の無煙炭田でした。その後の歴史のなかで、ロッキー山脈地域(現在のワイオミング州など)が全米最大の石炭産出地へと成長していくことになります。