「アメリカとの契約(Contract with America)」とは
「アメリカとの契約」は、1994年の中間選挙に向けて共和党が策定した10項目の立法提案です。当時の下院少数党院内総務ニュート・ギングリッチらが中心となってまとめ、第104回連邦議会で実現を目指す政策の柱として位置づけられました。
この契約は共和党の中間選挙戦略の要となり、同党は上下両院の多数派を獲得することに成功しました。民主党が議会の主導権を握っていた約40年ぶりの逆転であり、アメリカ政治史における転換点として知られています。
「アメリカとの契約」が約束した10の公約
契約の内容は以下の10項目でした。
- 均衡予算修正条項 — 連邦予算の均衡を憲法で義務づける改正案。
- 大統領への項目別拒否権(ラインアイテム・ベト)付与 — 予算案の一部だけを差し止める権限。
- 減税 — 中間所得層や企業への税負担の軽減。
- 福祉改革 — 福祉受給への就労要件導入など制度の見直し。
- 不法行為訴訟改革(トート改革) — 損害賠償訴訟の濫用防止と上限設定。
- 議員の任期制限 — 連邦議会議員の在任年数の制限。
- 小さな政府の実現 — 政府の規模縮小と規制緩和の推進。
- 教育における選択肢の拡大 — 学校選択制やバウチャー制度の推進。
- 犯罪被害者の権利保護 — 被害者への配慮を強化する刑事司法改革。
- 国防力の強化 — 軍事力の再建と安全保障体制の強化。
評価と影響
「アメリカとの契約」は発表当初から賛否を呼びました。批判者からは「実務性よりもイデオロギーに偏っている」「急進的すぎる」と指摘された一方、国民に分かりやすい形で政策を提示した先駆的な試みとして高く評価する声もありました。
結果として、この契約は共和党にとって大きな成功となり、1994年11月の中間選挙で同党は圧勝。40年ぶりに議会の主導権を取り戻しました。
その後も共和党は契約に掲げられた原則を掲げ続け、福祉改革法の成立など一部の公約は実際に法律として実現しました。ただし、すべての項目が成立したわけではなく、均衡予算修正条項などは今日まで実現していません。
「アメリカとの契約」は、選挙キャンペーンにおいて具体的な政策リストを有効活用した先例として、その後のアメリカ政治に大きな影響を与えました。現在でも、その理念や手法については賛否両論があり、政治研究の重要なテーマの一つとなっています。