人類史上、自国の歴史を体系的に文字記録として残した最初の国家は中国であるとされています。中国の最古の歴史文献は、殷(商)王朝(紀元前16世紀〜紀元前11世紀)の時代にまで遡ることができます。
甲骨文字と金文――最古の歴史記録
この時代の記録として代表的なのが、亀の甲羅や獣骨に刻まれた「甲骨文字」、そして青銅器に鋳込まれた「金文(青銅器銘文)」です。これらの文字資料には、王室の祭祀や儀式、対外遠征といった軍事行動、旱魃や洪水などの自然災害まで、当時の重要な出来事が詳細に記されており、単なる占いの記録にとどまらない貴重な一次史料となっています。
漢代における史学の確立
時代が下るにつれ、中国の歴史家たちはより洗練された歴史編纂の手法を発展させていきました。特に漢代(紀元前206年〜西暦220年)に入ると、司馬遷の『史記』に代表されるように、複数世紀にわたる出来事を網羅した包括的な歴史書が次々と生み出されるようになります。
こうした歴史書の内容は、政治史や軍事史にとどまりません。文化・経済・社会の変遷まで幅広くカバーしており、後世の人々が当時の社会の全体像を把握できるよう工夫されていました。『史記』は本紀(帝王の記録)、列伝(人物伝)、書(制度・文化)、表(年表)という多様な体裁を採り、以降の歴史書編纂の規範となりました。
現代につながる歴史記録の伝統
こうして確立された中国の歴史学の伝統は、王朝が交代しても途絶えることなく受け継がれ、今日に至っています。歴史書の編纂を国家的事業として継続してきた結果、中国は数千年にわたる豊富かつ緻密な歴史記録を保有する、世界でも類を見ない国となったのです。