1787年、フィラデルフィアで開催された制憲会議において、建国の父たちは新しい国家の根幹を定める文書、すなわちアメリカ合衆国憲法を起草しました。彼らが憲法を作った理由は、憲法の冒頭にあたる「前文」に見事に凝縮されています。ここでは、その6つの目的を一つずつ詳しく見ていきましょう。
憲法起草の背景
独立戦争を経てイギリスから独立を果たしたものの、当時の13植民地はそれぞれが独自の法律や通貨を持つ緩やかな連合体にすぎませんでした。中央政府の権限が弱く、州間の対立や経済的混乱が深刻化していたため、建国の父たちはより強固で統一された国家の枠組みを必要としていたのです。
前文に掲げられた6つの目的
1. より完全な連邦を形成すること(To form a more perfect union)
建国の父たちは、13の独立州を一つに結びつけ、州間の争いを未然に防ぐ統治システムを作ることを目指しました。これは、弱体化していた連合規約に代わる、より強力な中央政府の必要性を反映しています。
2. 正義を確立すること(To establish justice)
すべての人々が法の下で平等に扱われるべきだという信念のもと、市民の権利を守る政府を作ることが求められました。公正な司法制度の確立は、新国家の信頼性を支える重要な柱となりました。
3. 国内の平穏を保障すること(To insure domestic tranquility)
国内における平和と秩序を維持できる政府を作ることも、憲法制定の大きな目的の一つでした。内乱や暴動を防ぎ、国民が安心して暮らせる社会を実現することが目指されました。
4. 共通の防衛に備えること(To provide for the common defense)
外国からの攻撃から国全体を守れるよう、統一された防衛体制を整えることが必要でした。各州がばらばらに防御するのではなく、一国として外部の脅威に対処できる仕組みが求められたのです。
5. 一般の福祉を増進すること(To promote the general welfare)
教育、インフラ、医療など、市民生活に必要なサービスを提供し、国民全体の幸福を高めることも、政府の重要な役割とされました。これは現代の社会保障制度の思想的ルーツとも言えます。
6. 自由のもたらす恵みを確保すること(To secure the blessings of liberty)
建国の父たちは、市民の権利と自由を自らの世代だけでなく、未来の世代へと確実に受け継いでいくことを願っていました。この考えは、後の権利章典(修正条項)の追加にもつながっています。
今も生き続ける「生きた文書」
以上が、建国の父たちが憲法を起草した主な理由です。アメリカ合衆国憲法は、時代とともに修正条項の追加や最高裁判所による解釈を重ねてきた「生きた文書」です。しかし、その根幹にある原則——より完全な連邦の形成、正義の確立、国内の平穏、共通の防衛、一般の福祉の増進、そして自由の恵みの確保——は、200年以上経った今日でも変わらず受け継がれているのです。