アレクサンダー大王と「70の都市」の伝説
古代マケドニアの英雄アレクサンダー大王(紀元前356年〜紀元前323年)は、東方遠征の途上で数多くの都市を建設したことで知られています。古代の著述家プルタルコスによれば、その数は70以上に及んだとされ、多くには王自身にちなんだ「アレクサンドリア」という名前が付けられました。
なお、以下のリストには大王が直接築いた都市だけでなく、既存の都市を再建・改称したものや、後継者のセレウコス朝などヘレニズム時代に発展した都市も含まれています。ここでは地域ごとに整理してご紹介します。
エジプト・北アフリカの都市
- アレクサンドリア(エジプト)― 最も有名なアレクサンドリア。後にプトレマイオス朝の首都となり、古代世界最大級の図書館で栄えました。
- キュレネ(現シャーハット、リビア)
- プトレマイス(現トクラ、リビア)
- ベレニケ(現ベンガジ、リビア)
- テウケイラ(現トクラ、リビア)
中東・レバント地方の都市
- ティルス(レバノン)― 激しい包囲戦の末に再建された海上都市です。
- シドン(レバノン)
- ビュブロス(レバノン)
- ベリュトス(現ベイルート、レバノン)
- トリポリス(現トリポリ、レバノン)
- ダマスカス(シリア)
- パルミラ(シリア)
- ボストラ(シリア)
- デュラ・エウロポス(サリイェ、シリア)
- アパメア(現カラート・アル=マディーク、シリア)
- ラオディキア(現ラタキア、シリア)
- ガザ(パレスチナ)
- サマリア(パレスチナ)
- エリコ(パレスチナ)
- ペトラ(ヨルダン)
- アラド(ヨルダン)
- アンマン(ヨルダン)
- ゲラサ(現ジェラシュ、ヨルダン)
- フィラデルフィア(現アンマン、ヨルダン)
中央アジア・アフガニスタンの都市
- アレクサンドリア・アラコシア(現カンダハル、アフガニスタン)― 「カンダハル」という地名はこのアレクサンドリアが転訛したものとされます。
- アレクサンドリア・ブケファラ(パキスタン、ジェルム近郊)― 愛馬ブケファロスを偲んで命名されました。
- アレクサンドリア・エスカテ=「最果てのアレクサンドリア」(現ホジェンド、タジキスタン)
- アレクサンドリア・ソグディアナ(現ホジェンド、タジキスタン)
- アレクサンドリア・オクシアナ(アイ・ハヌム、アフガニスタン)
- カンダハル(アフガニスタン)
- ヘラート(アフガニスタン)― 別名アレクサンドリア・アリアナ。
- バルフ(アフガニスタン)
- メルブ(トルクメニスタン)
- アレクサンドリア・メルヴ(現メルブ、トルクメニスタン)
- マルギアナのアンティオキア(現メルブ、トルクメニスタン)
- ニサ(現アシガバト、トルクメニスタン)
イラン・イラクの都市
- アレクサンドリア・カルマニア(現ゴンブローン周辺、イラン)
- ティグリス河畔のセレウキア(現アル=マダーイン、イラク)
トルコ(小アジア)の都市
- アレクサンドリア・トロアス(ビガ、トルコ)
- アレクサンドレッタ(現イスケンデルン、トルコ)
- ミレトス(バラト、アイドゥン県)
- ハリカルナッソス(現ボドルム)
- プリエネ(ギュリュバフチェ)
- メアンデル河畔のマグネシア(マニサ県)
- トラレス(アイドゥン)
- サルデス(サルト)
- エフェソス(イズミル)
- テュアテイラ(現アヒサル、マニサ県)
- フィラデルフィア(現アラシェヒル、マニサ県)
- リュコス河畔のラオディキア(デニズリ)
- ヒエラポリス(パムッカレ)
- コロッサイ(ホナズ)
- ペルガモン(現ベルガマ)
- アッソス(ベフラムカレ)
- ニュサ(現スルタンヒサル、アイドゥン県)
- フォカイア(現フォチャ、イズミル)
- エリュトライ(現イルドゥル、イズミル県)
ギリシャ・バルカン半島の都市
- ミティリネ(レスボス島、ギリシャ)
- メテュムナ(現モリヴォス、レスボス島)
- アンティッサ(レスボス島)
- エレソス(レスボス島)
- ピュラー(レスボス島)
- タソス(リメナス、タソス島)
- アブデラ(ギリシャ)
- マロネイア(ギリシャ)
- ディカイア(現ネア・カルヴァリ、ギリシャ)
- アンフィポリス(ギリシャ)
- ペラ(ギリシャ)― 大王の出生地として有名です。
- エデッサ(ギリシャ)
- ビトラ(北マケドニア)
- ヘラクレア(ビトラ、北マケドニア)
- ストビ(グラツコ、北マケドニア)
- スクピ(現スコピエ、北マケドニア)
- リュクニドス(現オフリド、北マケドニア)
- アポロニア(現ベラト、アルバニア)
- デュラキウム(現ドゥラス、アルバニア)
- リッソス(現レジャ、アルバニア)
まとめ:大王が残した都市の遺産
エジプトのアレクサンドリアから中央アジアの「最果てのアレクサンドリア」まで、アレクサンダー大王が関わった都市は広大な地域に点在しています。これらの都市は単なる軍事拠点にとどまらず、ギリシャ語やギリシャ文化を東方へ伝える拠点となり、いわゆるヘレニズム文明の礎を築きました。現在でもカンダハルやホジェンドなど、各地の地名に「アレクサンドリア」の面影を残す街が存在するのは、大王の遠征が欧亜の歴史に刻んだ巨大な足跡の証といえるでしょう。