北米の歴史

トーマス・ジェファーソンは本当に米国の面積を2倍にしたのか?ルイジアナ買収の真相

ジェファーソン自身が国土を2倍にしたわけではない

「トーマス・ジェファーソンがアメリカの面積を2倍にした」という表現はよく目にしますが、これは正確には誤りです。国土をほぼ2倍にした「ルイジアナ買収」は、ジェファーソン大統領が自ら交渉し、署名したものではないからです。
実際には、この歴史的な取引はジェファーソン政権下で進められた一連の外交活動、すなわち国務長官ジェームズ・マディソンや現場の外交官たちの手によって実現しました。

ルイジアナ買収とは何だったのか

1803年、アメリカ合衆国はフランスからミシシッピ川以西の広大な土地「ルイジアナ」を約1,500万ドルで購入しました。その面積は約82万8千平方マイル(約214万平方キロメートル)に及び、この取引によって合衆国の領土はそれまでのほぼ2倍に拡大しました。
獲得した土地には、現在の15州以上にあたる地域や、ミシシッピ川の河口に位置する重要な港湾都市ニューオーリンズが含まれていました。

実際に交渉と署名を行ったのは誰か

外交全体の統括を担ったのは、ジェファーソン政権の国務長官ジェームズ・マディソン(後の第4代大統領)です。しかし、パリでの現場交渉を担当したのは、駐フランス公使ロバート・リビングストンと特使ジェームズ・モンロー(後の第5代大統領)の2人でした。
彼らはフランス側の財務大臣バルベ=マルボワとの間で条約案をまとめ、1803年4月30日に正式に調印しています。

なぜフランスは売却に応じたのか

ナポレオン率いるフランスは、カリブ海の植民地サン=ドマング(現在のハイチ)での革命と戦乱によって遠征軍を大きく消耗していました。加えてヨーロッパでの戦争再開が目前に迫り、遠く離れた北米の領土を維持する余裕も資金も不足していたのです。
こうした事情から、フランスはアメリカ側にとって思いがけないほど好条件での売却に同意することになりました。

憲法上のジレンマと歴史的意義

興味深いことに、ジェファーソンは本来、憲法の権限を厳格に解釈する立場の人でした。連邦政府に領土を取得する明文の権限がないことに悩んだ末、最終的には大統領の条約締結権限に基づいてこの購入を正当化しました。
上院の承認を経て成立したこの取引は、その後の西部開拓の道を開き、アメリカが大陸規模の国家へと発展する大きな礎となりました。

まとめると、「ジェファーソンが国土を2倍にした」というよりも、「ジェファーソン政権、とりわけ国務長官マディソンやリビングストン、モンローといった外交官たちの尽力によって、アメリカの面積は2倍になった」と表現する方が正確だと言えるでしょう。