米英戦争(1812年戦争)中、フランシス・スコット・キーがアメリカ国歌「星条旗(The Star-Spangled Banner)」を書くきっかけとなった旗は、現在、ワシントンD.C.にあるスミソニアン国立アメリカ歴史博物館に収蔵されています。「スタースパングルド・バナー・フラグ」と呼ばれるこの旗は、1814年9月13日から14日にかけて行われたボルチモアの戦いで高々と掲げられていました。
約9m×13mの巨大な「駐屯旗」
戦いの際にマクヘンリー要塞の上に翻っていたのは、約30フィート×42フィート(約9メートル×13メートル)という異例の大きさを誇る、駐屯地用の大型旗でした。この旗は、ボルチモアの旗職人メアリー・ピッカースギルとその縫製チームによってデザインされ、縫い上げられたものです。
旗には、当時の合衆国15州を表す15個の星と、建国当初の13植民地に新たに加わったケンタッキー州とテネシー州を含めた15本の条(ストライプ)があしらわれていました。
夜明けとともに目にした「勝利の旗」
キーは、夜通しイギリス艦隊による激しい砲撃を受ける要塞を目撃していました。そして翌朝、朝日の光の中で、巨大なアメリカ国旗が城壁の上に今もなお勝利の凱歌のように翻っている姿を目にします。この光景に深く感銘を受けた彼は、「マクヘンリー要塞の防衛(Defence of Fort M'Henry)」という詩を書き上げました。
この詩は後に「星条旗」として広く知られるようになり、旋律がつけられて、やがてアメリカ合衆国の国歌となりました。
スミソニアンでの保存と現在
米英戦争後、スタースパングルド・バナー・フラグは数多くの修復と保存作業を経てきました。1912年にはスミソニアン協会がこの旗を取得し、以来、専門家による入念な保存・修復が続けられています。
今日でもこの旗は、アメリカの歴史を象徴する存在であり続けています。国家の不屈の精神、愛国心、そして価値観と自由を守り抜こうとする意志を体現する、かけがえのない遺産なのです。