オセアニアの歴史

ハクスリーは『すばらしい新世界』を部外者の視点から書いたのか?

結論:部外者の視点ではない

オルダス・ハクスリーは、代表作『すばらしい新世界』をいわゆる「部外者の視点」から書いたわけではありません。物語は主人公バーナード・マルクスの声によって幕を開け、同じ声で幕を閉じます。そして作品全体を通じて、読者はバーナードの目を通して世界国家を見ることになるのです。

バーナード・マルクスという視点の意味

この語りの選択には重要な意味があります。バーナードは世界国家になじめず、周囲への違和感を抱えたまま生きる人物です。彼の視点を通すことで、一見完璧に見えるユートピア社会の異様さや矛盾が、読者自身の疑問として自然に浮かび上がる仕組みになっています。

他の登場人物の視点も織り込まれている

もちろん、小説にはバーナード以外の視点も描かれます。中でも印象的なのが、「野蛮人」として紹介されるジョンの視点です。文明の外側で育ったジョンは、世界国家を外から眺める存在であり、読者にとって最も身近な観察者といえるでしょう。

ただし、こうした登場人物たちの視点は、三人称視点によく見られるような、物語の外から全体を客観的に俯瞰する完全な「部外者」の視点ではありません。あくまで物語の内側で生きる人間の視点として機能しており、それこそがハクスリーの語りの大きな特徴だと言えます。

まとめ

『すばらしい新世界』は部外者の視点から書かれた作品ではなく、バーナード・マルクスをはじめとする登場人物たちの視点を軸に構成された小説です。彼らの内面と違和感を通してディストピアを描くことで、ハクスリーは読者を物語の内側へと深く引き込んでいるのです。